芸能

三田村邦彦に『必殺』降板を翻意させた藤田まことさんの言葉

三田村邦彦が藤田まことからかけられた言葉とは?

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・三田村邦彦が、後に代表作となった「必殺」シリーズの飾り職人の秀役を引き受け、続けると決めたときの葛藤について語った言葉をお届けする。

 * * *
 三田村邦彦は一九七九年に時代劇「必殺」シリーズの第十五作『必殺仕事人』で仕事人チームの一人「秀」を演じ、一躍人気スターになる。主人公の中村主水は藤田まことが演じた。

「最初は『必殺』は辞めたかったんです。お金をもらって人を殺して正義面をするというのが、嫌で。それでマネージャーに『できない』と言ったのですが、2クールだけやることになって。でも、それが延びると聞いて、プロデューサーに直接『できません』と言いました。

 そうしたら、藤田さんが『ちょっと話そうか』って。それで僕は自分の思いを話しました。そうしたら、藤田さんはこうおっしゃるんですよ。

『わしは中村主水を正当化しようとは思わない。正義面しているわけでもない。でも、あの時代には悪い奴がいるのに、お上が袖の下を貰っているから裁かれることなくノウノウと生きている。コイツを生かしていたら、また犠牲者が増える。それなら、主水はこれを命にかえてでもやっつけなあかん。

 主水もいいことしているわけじゃあない。人を殺しているんだから、いつかは自分も殺される。下水掃除でどぶ板を外したら主水がネズミに食われながら死骸になっている。そんな死に方がええと思っている。秀という役もそういうふうに考えてみたらどうだ』と。

 カッコいいと思いました。『娯楽作品なんだから楽しもうや』くらいに馬鹿にされると思っていたら、凄く真面目に考えている。素敵な生き方をしていると思って藤田さんが好きになり、出続けることにしたんです」

 時代劇初挑戦の三田村を支えたのは、「必殺」シリーズに長年たずさわってきた京都映画(現・松竹撮影所)のスタッフたちだった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン