科学館に保存・展示されていたSLは、それまで化学メーカー・石原産業が四日市で資材輸送・工員輸送のために使用していた。不要になったため、科学館がSLを譲り受けることになったが、当初は敷地内で保存・展示するだけだった。事態が大きく変わったのは、名古屋市の河村たかし市長による意向からだった。
SLに強い思いれを抱く河村市長は、常々「あおなみ線でSLを運行したい」と発言していた。2013年にあおなみ線の一部区間でSL運転をイベント的に実現。あおなみ線を走ったSLは科学館に保存・展示されていた車両ではなく、JR西日本から借りてきた。わずか2日間のイベント的なSL運転だったが、大盛況に終わった。
SL運転の成功を機に、名古屋市は定期的にSL運転をできるか検討。しかし、SLを運転するには、クリアしなければならない課題が多かった。それらをクリアできないため、SL運転計画は頓挫してしまう。その後、名古屋市はSL運転から動態保存に方針を転換。科学館前に保存・展示されていたSLを活用することが模索された。
SLを動態保存する手法は大まかに2種類ある。蒸気機関によって完全に復元する手法と圧縮空気によって動かす手法だ。
蒸気機関によって完全復元するには、SLが走れるだけの広い敷地が必要になる。また、煤煙や騒音、振動といった周辺環境への配慮も求められる。費用も莫大になる。クリアしなければならないハードルは多い。