多くのSLを保存・展示している京都鉄道博物館は、短い区間ながら敷地内でSLの運転をしている。京都鉄道博物館は2015年にリニューアルして現在の館名に改称されたが、前身は梅小路蒸気機関車館という博物館だった。その名前からもわかるように、同館は蒸気機関車が主役の博物館であり、ハード・ソフト両面でSLの保存・展示には好環境が整っていた。その系譜を継承する、現在の京都鉄道博物館がSL保存・展示に強いのは当然の話なのだ。
しかし、ほかの施設でSLを保存・展示することは容易ではない。そのため、蒸気機関ではなく圧縮空気による再現を選択する施設は少なくない。圧縮空気での再現なら、煤煙や振動、騒音といった周辺環境への諸問題はクリアしやすい。圧縮空気による再現は完全な復元とは言い難いが、それでも和歌山県の有田川鉄道公園や岐阜県の明知鉄道は圧縮空気でのSL運転を再現し、人気を博している。
「予算との兼ね合いもあるので、蒸気機関か圧縮空気のどちらになるかは検討中としか申し上げられません。しかし、どちらになってもVRなどの科学技術と組み合わせるなどして、科学館の特性を活かした体験ができる仕組みを考えています」(前出・科学館担当職員)
SLが全盛期だったのは、半世紀も前になった。すでに、SLに乗車経験がある層は少なくなり、それに伴ってSLが絶対的な観光の目玉になる時代ではなくなっている。
SLとの新たな向き合い方を考えなければならない時にきているのかもしれない。