米国防総省はトランプ大統領の指示により「ソレイマニ司令官を殺害することで、在外米国人を守るための断固とした防衛措置をとった」と声明を出したが、最も極端な選択肢として自分たちが提示したこのプランを、まさか大統領が選択するとは想定していなかったと米メディアは報じている。
大統領の決断に衝撃を受けながらも、それに従った背景にあったのは「ミルグラム効果」かもしれない。ミルグラム効果とは権威者に命令されると、たとえおかしいと思ってもそれに従ってしまう心理的傾向のことだ。人はある状況において、自分が権威だと認めた相手からの命令や指示は絶対的に正しいと考えてしまう傾向がある。そのため、命令した権威者に対して責任は感じるが、命令や指示を実行すること自体には責任を感じなくなるというのだ。ナチスドイツの虐殺行為が行われた一因といわれるが、日常においても状況によって、どのような人にでも起こりうる心理的傾向である。
ソレイマニ司令官殺害は米国にとって正しい選択とトランプ大統領が定義づけることにより、今回の行為はトランプ支持派らにとってより受け入れやすく、強いアメリカを印象づけることになった。
報復攻撃に先立ってイランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい報復を受けることになる」と声明を出し、ロウハニ大統領も「イランは疑いもなく反撃する」と発表。一方、トランプ大統領は米国や米国民を攻撃すれば「イランの52か所を標的にする」とツイッターに投稿していた。公約の多くを実現させてきたトランプ大統領だけに、有言実行の可能性は高い。
もしそうなれば、米国内ではトランプ大統領によるミルグラム効果がさらに増幅増長されるだろう。対立が激化する米国とイラン情勢もトランプ大統領にとっては力を誇示できるカードの一枚なのだろうが、その切り方をどうか間違えないでほしいと願うばかりだ。