ライフ

「愛に生きる女」が認知症でグループホームに入ったら?

ちょっと個性的な伯母がグループホームに入居してみたら…

 父の死後、認知症の母(85才)の介護をすることになった55才のN記者(女性)。そんなN記者の母の妹であるSおばさんは少し変わり者だったという。でも夫への愛はひと一倍の仲よし夫婦だ。そんなSおばさんが夫と離れ、グループホームで暮らすことになった。一体どうなった…?

 * * *
 母は9人きょうだい。今ならテレビで特集される大家族だ。

 私の祖父母とともに、女7人、男2人が東京の下町で、小さな家に暮らしていた。同じ親から生まれ、同じ屋根の下に育ってもキャラクターは9人ともまったく違う。「恐ろしいほどの熱密度で息苦しかった」と母は言っていたが、ひとりっ子の私には憧れの家族像だ。

 そんな中で母のすぐ下の妹、Sおばさんは“変わり者”キャラ。孤高というわけではないが、群れないし同調しない。たまに親戚が集まると、宴もたけなわの頃決まってSおばさんが怒り出し、ひと悶着起きる。Sおばさんの娘、Aちゃんが「Nちゃんのママはいいな、普通の人で」とつぶやくのをよく聞いたものだ。

 でもSおばさんにはかわいい一面もあった。

「Sちゃんは愛想がなくて親戚づきあいも悪いし、すぐ怒る。でも、旦那さんには尽くしているの。大好きなのよ。“愛に生きる女”って感じね、あはははは」と、母はちょっと皮肉っぽく言ったが、Sおばさんが親戚の前で怒る顔と、夫のYおじさんと一緒にいる時の仲睦まじくやさしい表情のギャップに、思わず笑った。

 そんなSおばさんも認知症になった。

「父は偉いと思うわ。母はどんどん忘れちゃってわがまま放題。時々様子を見に行く私はイライラしちゃうけど、父はうまく受け止めるのよ」と、Aちゃんの愚痴を聞いていると、母と生前の父の似たような様子が目に浮んだ。

 認知症でもの忘れや小さな混乱が出始めても、夫婦で支え合っているとなんとかなってしまう。うるさい娘にいちいち失敗を指摘されなければ、案外穏やかに生活は回っていくのだ。Yおじさんは認知症ではないが、Sおばさんをやさしく支えている。寛容なのか無頓着なのか、年季の入った夫婦には、親子にはない不思議な空気があるようだ。

 ところがSおばさん夫婦に大ピンチ発生! Yおじさんが入院することになったのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン