「もっとも重要で、専門家でも難しいのは、“待つ”こと。家族のペースで事を運ぼうとすれば、先回りして指示したくなりますが、矢継ぎ早に言葉をかけると、認知症の人は混乱するのです。本人のペースを見守り、危険がないかだけをチェックしてあげてください」(林田さん)
そして介護家族の困り事に多いのが入浴や着替え、歯磨きなどいろいろな拒否。これには、なんとかやらせようとするのではなく、まず“受容”。
「拒否の理由はいろいろですが、まずは本人を受け入れる。多少、変でも、汚れてもよしとする。家庭内ではもっとほったらかしでもいいと思う。認知症の人は機能が衰えつつある中で、実は周囲に順応することに必死なのです。
病気のために、何をするにも時間がかかり、出来栄えもよくない。家族は“昔はもっと上手にできたのに”と思うでしょう。でも今、そのために使っているエネルギーは昔の110%。身近にいる人はそこに気づけるくらいの距離が必要です」(林田さん)
家族にはいずれも難題だ。でも思い詰めてその無理をこじらせれば、虐待にもつながると林田さんは言う。
「介護に取り組む家族には、相談できる3種類の仲間を作ってほしいと思います。1つは医師や介護職などの専門職。もう1つは家族会など、身近な地域などで介護のことを話せる仲間。そして介護に関係のない友達。さらにグループホームのような施設を利用し、ほどよい距離とやさしくできる関係を保つことも選択肢に入れておいてください」(林田さん)
※女性セブン2020年1月30日号