芸能

三遊亭粋歌 仕上げに複雑な余韻残る引きこもり女性の自立譚

三遊亭粋歌が見事な作品を披露(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、女性二ツ目、三遊亭粋歌による引きこもり女性を主人公にした、単なる「いい話」に終わらない複雑な余韻が残る噺についてお届けする。

 * * *
 新作で人気の女性二ツ目、三遊亭粋歌。彼女が昨年12月11日に「粋歌の新作コレクション2019冬」(内幸町ホール)で披露した『浮世の床から』は、新境地を切り開いた見事な作品だった。

 この日の1席目は『嫁の話がつまらない』。働き方改革で残業が減り、新婚の嫁のつまらない話を毎日延々と聞かされることに耐えられなくなった男が、上司の助言で他人事として「嫁のつまらない話に悩む同僚」の話をしてみると、嫁は「その奥さんは浮気を隠すためにわざとつまらない話をしてる」と言って不倫のディテールを語りだし、夫を不安のどん底に叩き落とす。もともとは橘家文吾のために書いた作品だ。

 2席目は、まだインターネットがなかった時代、ラジオの深夜放送に熱心に投稿し続ける田舎の中学生たちを描いた『ラジオデイズ』。古今亭駒治の作品で、粋歌は独自のアレンジを加えて自分らしく演じた。

 そして3席目が『浮世の床から』。テーマは「引きこもり」だ。

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