田代尚機のチャイナ・リサーチ

武漢は封鎖、上海では企業休業… 新型コロナの中国経済への影響は?

シャッターが降ろされたままの武漢の海鮮市場(AFP=時事)

 新型ウイルス肺炎に対する中国政府の対策はどこまで効果があるのか──。武漢市では春節直前の1月23日、突然、「同日10時から、全市内の公共バス、地下鉄、渡し船、長距離バスの運行をすべてストップする。特別な理由がない限り、市民は武漢から離れてはならず、空港、駅、武漢から他地域に繋がる道路を閉鎖する。解除の時期については別途通告する」と発表、事実上の都市封鎖を敢行した。武漢市に近い周辺の都市もすぐさま、これに続いた。

 ただ、24日から始まった春節休暇を前に、故郷に帰ったり、旅行に出たりする予定を立てていた人々の大半は既に武漢市を後にしていた。

 春節期間の長距離鉄道の混み具合、航空チケットの価格動向を見ればわかる。毎年、春節の1週間前あたりから鉄道はほぼ満席状態、航空チケットは急騰し、購入が難しくなる。新型肺炎の発症は昨年12月に確認されており、今年に入り武漢だけでなく、全国でも、ネットを中心に情報が共有されていた。感染の予防を意識し、早めに武漢を離れた人も多かっただろう。

 武漢市は中国中部最大の都市であり、2019年末の戸籍人口は908万人、流動人口は510万人である。春節を前に国内外に散らばったウイルス感染者の数は少なくない。

 全国ベースでも、空港、地下鉄などの公共機関では体温測定を始めているところがある。飲食関係者に対してマスクの着用を義務付ける通達を出したところもある。

 筆者が間接的に確認できた範囲では28日現在、北京市でも、東北の長春市でも、地下鉄、バスなどの交通機関の利用者はまばらで、百貨店など日常生活品の販売が少ない小売店では事実上、開店休業状態のところもある。

 初期段階の拡散が大きいのであろう。こうした政府の徹底した対策、住民の予防意識の高さにもかかわらず、患者の増加は止まらない。

 中国の保険当局、国家衛生健康委員会の発表によれば、1月27日24時現在、中国本土累計患者数は4515人。この内重症患者は976人で、死亡者は106人(内、武漢市は100人)。治療が終わり退院した患者は60人。このほか、特定はできないが似たような症状の患者が6973人いる。医学的な観察下にある人は4万4132人である。依然として、日ごとに患者数が急増している状態だ。武漢市内の華南海鮮市場西区にある野生動物取引市場が発生源とされるが、僅か1か月強でこれだけの数の患者が発生している。強烈な感染力だ。

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