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2020.01.30 15:00  マネーポストWEB

遺言状の作成現場を動画で撮影 法的な証拠となり得るか

遺言を確実なものとするにはどうすべきか

 遺産相続はトラブルがつきもの。たとえ遺言が存在しても、本物かニセモノかで揉めるケースも珍しくない。そういったことを防ぐために、遺言の作成現場をスマホの動画で撮った場合、それは証拠になるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 父が遺言状を作成するので、その様子をスマホの動画に記録することに。映像に残せば、信憑性が増すと考えたからです。しかし、友人の話だと、日本の裁判制度はいまだ書面が絶対的で、何か問題が起き、映像を提出しても、参考程度にしか扱われないとか。そうなると、動画を撮影しても無駄ですか。

【回答】
 遺言を書くことは、極めて私的な事柄ですが、お父さんが嫌がらなければ、スマホ動画の撮影はマイナスではありません。

 ただ、遺言を確実にしたいというのであれば、公正証書遺言が最適です。お父さん自身が公証人役場に出向くか、身体が不自由なら出張してもらい、公証人に自分の遺言の希望を伝え、公正証書にするのです。公証人が遺言者の真意の確認はもちろん、遺言できる能力の有無まで配慮して作成するので、後からクレームをつけられることは、まずありません。実際の段取りでも、公証人に予め遺言の希望を伝えて相談するので、内容的にも矛盾がない遺言になります。しかも、遺言書の原本は公証人役場で長期間保管されます。

 もっとも、今般の相続法の改正で、自筆の遺言書でも内容全文、日付氏名の自書押印は変わりがありませんが、遺言の対象になる財産の目録を作成し、遺言書に添付する場合には、その目録に限って自書不要になりましたから、自筆証書遺言の利用も続くと思います。

 そうであっても、やはり問題になるのは、遺言者が自分の意思で自書した遺言かということ。その意味で、お父さんが遺言書を自書している状態の動画は、有力な証拠になります。むろん、ご本人の意思で書いていることがわかるような動画でないと無駄になります。また、横から他の人が口を出したり、他人が書いた原稿を示したりする状態が記録されれば、疑われる要素になります。

 ご質問の例に限らず、証拠を残すために状況を動画に撮り、裁判所などに証拠として提出することがあります。その場合には、撮影年月日・場所・撮影者を記録するだけでなく、例えばテレビのニュース画面などの映像を写り込ませ、撮影日の裏付けにするのもよいと思います。

【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2020年2月7日号

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