そうなった時、切り捨てられた菅氏が安倍首相に忠誠を尽くし、政権を支える理由はなくなる。菅氏に近い二階派ベテラン議員が“菅の乱”が起きると予言する。
「これまで自民党内に反安倍勢力といえるものはなかったが、菅官房長官の更迭、岸田幹事長となれば、政権中枢を追われた形の菅、二階、それに竹下派や大乱を望む石破派、改憲反対の谷垣グループなど非主流派を加えて党内に大きな反安倍勢力ができる。そうなると安倍一強の時代ははっきり終わる」
総裁選は安倍首相の鶴の一声で岸田氏に決まるという状況ではなくなる。
「菅さんが引き立ててきた河野太郎や小泉進次郎といった発信力の強い政治家の存在感も高まる。自民党に権力闘争が蘇れば政治は安倍の次の時代に進む。だから、“菅辞任情報”は菅さんにとっても都合がいいとさえ言える」(二階派ベテラン)
追い詰められたかにみえる菅氏にとって、官房長官辞任の一手は、実は安倍政治をひっくり返すという大政局の始まりにつながる。そう見ると、辞任情報は逆の意味を帯びる。
「私が辞めたら政権の命運は尽きる。それでもいいのか」
菅氏が安倍首相に突きつけた“最後通牒”かもしれない。
※週刊ポスト2020年2月14日号