国内

“ガラケー女”に間違われた女性、人生を変えた壮絶な1日

“ガラケー女”と間違えられ、冤罪被害を受けたAさんは釈明記者会見を開いた(共同通信社)

 ある日突然、自分の名前や顔写真、住所などの個人情報がインターネット上で公表される。それも、犯罪者として──もちろん、身に覚えはない。情報が広がるスピードは速く、2時間もあれば数百万人が、自分を犯罪者として叩き始める。家族まで危険にさらされ、仕事の信用も失う。

 そんなこと、自分の身には降りかかるはずがないと思っているのではないだろうか。しかし、こういったネットでの誹謗中傷事件は10年ほど前から増え続けている。なぜ、こんなことが起こるのか…。誹謗中傷書き込みで犯罪者にされた被害者を取材。彼らもまた、まさか自分にこんなことが…と思っていた。常磐自動車道で2019年8月10日に発生した「あおり運転殴打事件」では、宮崎文夫被告が、当時24才の男性にあおり運転を仕掛け、その後無理矢理停止させ、「殺すぞ」などと怒鳴りながら殴打した。その様子を脇でガラケーを使い撮影する「ガラケー女」も注目された。

◆あおり運転事件の容疑者“ガラケー女”と間違われ、1日で人生が一変しました…

【2019年8月17日(土) 午前4時】

 2019年8月17日土曜、朝4時。1件の投稿がツイッターに上がった。そこには、ある女性の顔写真とともに「#ガラケー女 ○○(女性の本名)」の一文が書かれていた。その後さらに別のツイッターも上がり、そこには、女性の顔写真とともに「あおり運転 指名手配犯 ガラケー女 ○○(女性の本名) 拡散希望」といったつぶやきが──。

 このツイートは瞬く間に広がり、その女性の顔と名は犯罪者として日本中に知れ渡ることとなった。

【2019年8月17日(土) 午前6時】

 彼女が事態に気づいたのは午前6時のことだった。

「あの日は、休日だったにもかかわらず、早朝からたくさんのメールが送られてきたんです。タイトルには『宮崎の女だろう』などと書かれており、わけがわかりませんでした。電話も執拗に鳴り続けていたのですが、知らない番号だったので無視していると、友人から連絡が。慌てて出ると、私を犯罪者とする内容の情報がネットに流れており、実名と顔写真も公開されていると教えられました。何が起こっているのか状況がわかりませんでしたが、自分が犯罪者扱いされている事実に対し、どう対処すべきなのかを考えました」

 当時を振り返り、そう話すのは、茨城県で起きたあおり運転殴打事件の容疑者と間違われ、ネットに個人情報を流されてしまった被害女性Aさんだ。落ち着いた物腰、冷静な語り口調の彼女だが、当時はパニックを起こしたという。

 この事件は、8月10日に起こった。宮崎文夫被告の車に同乗し、その蔵匿・隠避にかかわった、通称「ガラケー女」と、インスタグラムにアップされたAさんの写真の服装やサングラスがたまたま似ていたことと、宮崎被告がAさんのインスタグラムをフォローしていたことから、Aさんが「ガラケー女」だというデマが流されたのだ。

【2019年8月17日(土) 午前7時44分】

 苦情の電話が300件以上鳴り、インスタグラムへの誹謗中傷だけでも1000件以上。知らない人からのいわれのない悪口や脅迫にさらされ、通常なら、恐怖で思考停止になってもおかしくはない状態だ。にもかかわらず、彼女の行動は早かった。

関連記事

トピックス

3つの出版社から計4冊の書籍が発売された佳子さま(時事通信フォト)
「眞子さんにメッセージを送られているのでは」佳子さま(30)のワイン系ツイードジャケットに込められた“特別な想い”《お二人の思い出の場でお召しに》
週刊ポスト
再び頂点を掴めるのか(大谷翔平/時事通信フォト)
【MLB開幕・ドジャース連覇への道のり】早々に地区優勝を決めてもポストシーズンでの“ドジャース病”を危惧する声 ワールドシリーズで立ちはだかるのは大型補強のレッドソックスか
週刊ポスト
「W復帰」の可能性も囁かれる(時事通信フォト)
《ダウンタウン“W復帰”の可能性》浜田雅功の休養が松本人志のネット復帰計画に与える影響は?「夏頃にはコンビとしてアクションを起こすのでは」との指摘
週刊ポスト
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵容疑者(62)
【独占入手】女占い師の自殺教唆事件で亡くなった男性の長男が手記「200万円の預金通帳を取り上げられ…」「学費と生活費をストップ」、さらに「突然、親子の縁を切る」 警察に真相解明も求める
NEWSポストセブン
2023年12月に亡くなった八代亜紀さん
《前代未聞のトラブル》八代亜紀さん、発売予定の追悼アルバムの特典に“若い頃に撮影した私的な写真”が封入 重大なプライバシー侵害の可能性
女性セブン
旭琉會二代目会長の襲名盃に独占潜入した。参加者はすべて総長クラス以上の幹部たちだ(撮影/鈴木智彦。以下同)
《親子盃を交わして…》沖縄の指定暴力団・旭琉會「襲名式」に潜入 古い慣習を守る儀式の一部始終、警察キャリアも激高した沖縄ヤクザの暴力性とは
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
《男性2人に自殺教唆》自称占い師・濱田淑恵容疑者が被害者と結んでいた“8000万円豪邸の死因贈与契約” 被害者が購入した白い豪邸の所有権が、容疑者の親族に移っていた
週刊ポスト
キルト展で三浦百恵さんの作品を見入ったことがある紀子さま(写真左/JMPA)
紀子さま、子育てが落ち着いてご自身の時間の使い方も変化 以前よりも増す“手芸熱”キルト展で三浦百恵さんの作品をじっくりと見入ったことも
女性セブン
被害者の「最上あい」こと佐藤愛里さん(左)と、高野健一容疑者の中学時代の卒業アルバム写真
〈リアルな“貢ぎ履歴”と“経済的困窮”〉「8万円弱の給与を即日引き落とし。口座残高が442円に」女性ライバー“最上あい”を刺殺した高野健一容疑者(42)の通帳記録…動機と関連か【高田馬場・刺殺】
NEWSポストセブン
ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《あられもない姿でローラースケート》カニエ・ウェストの17歳年下妻が公開した新ファッション「アートである可能性も」急浮上
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
〈50まんでおけ?〉高野容疑者が女性ライバー“最上あい”さんに「尽くした理由」、最上さんが夜の街で吐露した「シンママの本音」と「複雑な過去」【高田馬場刺殺事件】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! マイナ免許証の恐ろしい重大リスクほか
「週刊ポスト」本日発売! マイナ免許証の恐ろしい重大リスクほか
NEWSポストセブン