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コラム

2020.02.12 15:00  マネーポストWEB

安くなって輸入激増中の米国産牛肉に潜む「ホルモン剤」のリスク

アメリカ産牛肉の輸入量が急増

 スーパーの精肉コーナーに異変が起きている。《アンガスビーフ、値下げしました!》、《大還元セール アメリカ産牛肉ステーキ用》──。国産牛やオージービーフのショーケースだった場所に、この年明けから、値下げされたアメリカ産牛肉がズラリと並ぶようになったのだ。

「国産はやっぱり高い。それでも中学生の息子が牛肉を食べたがるので、アメリカ産が安くなっているのはうれしい」(埼玉・40代主婦)

「サシが入った高級和牛の肉は胃がもたれて、量が食べられない。それよりも、肉の味がしっかりする分厚いアメリカ産の赤身肉をじっくり焼いて食べるのが、最近のわが家のブーム。安くなって、さらに大きな塊で購入するようになりました」(東京・50代主婦)

 国産牛や、オーストラリアやニュージーランドからの輸入牛の価格は据え置きなのに、アメリカ産だけ値下げされたのには、はっきりとした理由がある。今年1月1日から、アメリカ産牛肉を輸入する際に日本政府がかける関税が安くなったからだ。

 これまで38.5%だったアメリカ産牛肉の関税は、「日米貿易協定」が発効した今年元日から26.6%へ、3割も引き下げられた。これでオーストラリアやカナダなどの環太平洋パートナーシップ協定(TPP)加盟国と同じ関税率になったことになる。今後も段階的に関税率は下がり続け、2033年4月には9%にまで下がる予定だ。

 この関税率引き下げがきっかけで、各社も動きを見せた。冒頭のように、イトーヨーカ堂やイオンリテールなどの大手スーパー各社が1月上旬、こぞって「還元セール」を行ったのだ。

 実際、アメリカンビーフの輸入量は激増している。財務省の速報値によれば、アメリカ産牛肉輸入量は、日米貿易協定が発効した今年1月1日から10日までで、すでに前年同月(1万7525トン)の50%を超える9533トンに達し、このペースでいけば1.5倍以上に増える。今後、手頃な価格のアメリカ産が日本中のスーパーに行きわたることになり、私たちの食卓にも上ることだろう。

 一見“家計の味方”となった日米貿易協定は、2017年のトランプ大統領就任とアメリカのTPP離脱に伴い、日米間で結ばれた二国間貿易協定だ。TPP加盟外となったアメリカは関税率が高いまま据え置かれたため、日本国内では加盟国のオーストラリア産やカナダ産より高くなり、アメリカ産牛肉の輸入量が減少していた。

 これを苦々しく思ったのがトランプ大統領だ。彼の大票田であるテキサス州は米国内でも最大の農場数・農場面積を誇る農業地帯。特に牛肉の生産地として知られており、日本への輸出拡大は彼の支持層へのアピールにもなる。そこでトランプ氏は日本へ貿易協定の締結を強く迫った。

「うろたえたのが、安倍政権でした。トランプ大統領側は“条件をのまないなら日本からの自動車の輸入に25%の追加関税をかける”と脅しにかかり、安倍首相はさっさと白旗を掲げてしまった。ロシアや北朝鮮などとの外交が失敗続きの安倍首相は、“シンゾーはトモダチ”と言ってくれるトランプ大統領のご機嫌を取り続けるしかないんです」(政治ジャーナリスト)

◆「肥育ホルモン剤」で牛の成長を早める

 そうして「安倍-トランプ密約」によりアメリカ産牛肉の輸入量は増大した。家計を預かる主婦としては牛肉が安く買えるようになるのであれば、どんな経緯があったとしても歓迎したいところなのだが、話はそう単純ではない。東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんが指摘する。

「アメリカ産牛肉が安く買えるようになって喜んでいる人も多いかもしれません。メディア報道でも『輸入品に押された日本の生産者にとっては苦境だけれど、消費者にとってはお得』というような形で伝えられていますが、実はそんな簡単な話ではない。食品の自由化は消費者の問題であり、何より、私たちの健康、ひいては生命の問題にかかわってくるのです」

 なんとアメリカ産牛肉には、とんでもない危険が潜んでいる可能性があるというのだ。

 米ハーバード大学研究員を経て、ボストン在住の内科医・大西睦子さんはこう話す。

「1950年代から、アメリカ産牛のほとんどが『肥育ホルモン剤』としてエストロゲンなどの女性ホルモンを投与されて育てられています。『成長促進剤ホルモン』とも呼ばれ、牛の成長を早め、飼育コストが節減できるからなのですが、このような女性ホルモンが残留した肉は人間の子供の性成熟に拍車をかけたり、がんの発症を誘発したりする懸念があるのです」

 女性ホルモン剤には、動物の体内にもともと存在するホルモンを製剤とした「天然型」と、化学的に合成された「合成型」がある。日本では天然型の黄体ホルモンのプロゲステロン、卵胞ホルモンのエストロゲンのみ使用が許可されているが、繁殖障害の治療や、人工授精時期の調節などの目的に限られ、肥育目的では使えない。

 その一方、アメリカやカナダなどでは、合成型を含めた女性ホルモン剤の使用が許可されており、アメリカでは残留基準値が決められていないものすらある。

「1970年代半ばから1980年代初めにかけて、プエルトリコなどで幼い女の子の乳房がふくらんだり、月経が起きるなど、性的に異常な発育が続出しました。その原因がアメリカ産の牛肉に残留した合成肥育ホルモン剤『ジエチルスチルペストロール』だとされたのです。そこで、アメリカでは1979年に、EC(現在のEUの前身)では1981年に使用が禁止されました。

 ただし、同種の合成女性ホルモンは使用され続けてきました。そこでヨーロッパでは家畜へのホルモン投与反対運動が起こった。1988年に使用の全面禁止、1989年には合成女性ホルモン剤を使用したアメリカ産の牛肉などが輸入禁止になりました。最近では、女性ホルモンを多く利用・服用すると乳がんが増えるという研究データもあり、ホルモン剤の使用はさらに疑問視されています」(大西さん)

 大西さんが指摘するように、EUは現在に至るまで肥育ホルモンを使用して育てた牛肉の輸入を一切認めていない。「安全である」と主張してアメリカが世界貿易機関(WTO)に提訴、EUに対し報復関税をかけるなど、欧米間で貿易摩擦が激化したものの、それでもEU側は突っぱねてきた歴史がある。

※女性セブン2020年2月20日号

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