しかし、韓国の産業界にそういうカルチャーはない。今回の輸出規制で「寝た子を起こした」と見る向きもあるようだが、象徴的な言い方をすれば、3人くらいは起きたとしても、300人は寝ているだろう。なぜか? その理由は韓国産業界のメンタリティにある。
もともと韓国人の多くは、自分たちのほうが“先輩”であり、あらゆる面で日本よりも進んでいたと考えている。たしかに、それも一理ある。明仁天皇(現・上皇)も「桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると続日本紀に記されていることに韓国とのゆかりを感じています」と述べている。
ところが、日本による植民地化と圧政で抑えつけられ、さらに戦後は南北に分断された。その結果、日本の後塵を拝することになった。だから韓国の悲哀は「すべて日本のせいだ」──。韓国の政治家や年配者は、自分たちのだらしなさを棚に上げ、伝統的にそう説明してきたのである。
そもそも韓国で戦後に財閥が誕生して繁栄したのは、役人の許認可権限が強いからである。政治家と癒着して役人とつるんだ財閥が、儲かる産業や不動産などの利権を独占してしまうのだ。このため役人と財閥企業の正社員以外は「ヘルコリア」(※地獄の朝鮮。韓国人が就職率・就労率の低さや労働環境の劣悪さなどを念頭に置いて自国を自虐的に呼ぶ言い方)で、夢も希望もない状況になっている。
そして財閥は、日本や欧米に追いつき追い越すためにかなり無理をしている。韓国の中小企業によれば、彼らが品質改善や生産性向上、コストダウンなどで良いアイデアを出したり新しい技術や製品を開発したりしても、財閥に全部吸い上げられてしまい、自分たちは割を食って細るだけなので無駄な努力はしないという。だから韓国では中小企業が育たず、産業の裾野が広がらないのだ。
前出の『朝日新聞』の記事によると、今回の局面では、財閥の大企業が率先して脱「日本頼み」に動き出し、素材や部品の開発を目指す中堅・中小企業に多くの大企業が生産ラインを開放しているという。