◆3年間に3つの公立大学が誕生した長野県「大学改革の裏側」
公立大学が急増した背景を、4つの公立大学がある長野県のケースで見てみよう。長野県には現在、国立の信州大学をはじめ4年制大学が国立大1、公立大4、私立大5と全部で10校存在する。このうち公立大は長野大学、長野県立大学、長野県看護大学、公立諏訪東京理科大の4校だ。それぞれの大学の特徴を簡単に紹介しよう。
【長野大学】
設立時は本州大学。上田市と合併する前の小県郡塩田町が全額出資して1966年に設立。公設民営大学の先駆け。1972年には募集停止に。その後、校名を長野大学として再出発。2017年に上田市が公立大学法人の設置者となって公立大学となった。3学部で学生数は1457人。
【長野県立大学】
元祖は1950年創立の長野県短期大学。県が4年制の公立大として新設をめざしたが、県内の私大や有識者から「学生獲得をめぐる競合懸念」などの理由で反対論が噴出。2018年にようやく開学にこぎつけた。理事長はソニー元社長の安藤国威氏。2学部3学科で学生数486人。
【長野県看護大学】
1995年開学の公立単科大学で看護学部のみ。大学院あり。学生数は373人(大学院28人含む)。
【公立諏訪東京理科大学】
1990年に東京理科大学諏訪短期大学開設。2002年に諏訪東京理科大学に改組転換。2018年に公立大学に鞍替え。設立母体は諏訪地域6市町村で構成する「諏訪広域公立大学事務組合」。学生数1245人(大学院21人含む)。
この数年で新設1校、鞍替え2校というのが実態だ。新設の長野県立大学は4学期制導入、1年次全寮制、2年次全員参加の海外短期研修などのユニークな教育スタイルで「攻める大学」を標榜する。国際教養大を意識しているように見える。
初年度(2018年度)の志願者は全国各地から950人。受験者数は719人で294人が合格し、247人が入学した。入学者の内訳は長野県が143人(57.9%)で最多。県外で多いのは富山県13人、新潟県12人、群馬県10人など。受験者は42都道府県、入学者は27都道府県に及んだ。同年度の信州大をみると県内の入学者は514人で全体の25.6%だから、県立大の方が地域色が色濃い。2020年度の志願倍率は5.1倍。