中田:確かにそうですね。まず、『スマホを落としただけなのに』というタイトルに、「落とした“だけ”じゃないだろ! スマホを落としたら大変だろ!」と、ツッコミが入るようになった(笑い)。
志駕:実際にみんなスマホの扱いに気をつけるようになりましたよね。
中田:ぼく自身、映画を撮りながら、セキュリティー意識がかなり高まりました。ある企業のセキュリティー顧問からアドバイスをいただいて、スマホやパソコン、使っているアプリなどのパスワードを全部変えた。そのパスワードは忘れないように、手書きにして家に置いてあります。だからもし、出先でパスワードがわからなくなっても、家に帰りさえすればすべて確認できる。最後は、アナログが強いのだと実感しました。
志駕:基本的に決済系のパスワードは一つひとつ別にすべきです。SNSが乗っ取られても一般人ならば被害は少ないけど、ネットショッピングのパスワードを抜かれるとかなりの実害が生じますから。
中田:ただし、アナログがいいといっても、パスワードをメモしてそのままパソコンに貼っておくのは絶対にダメ。必ず、机の引き出しなど、離れた場所にしまっておいてください。
志駕:セキュリティーのことでいうとよくあるのが、「このパソコンは乗っ取られたため、3時間以内にこちらのソフトをダウンロードしてください」とセキュリティーソフト自身が警告する詐欺。騙されて入力すると、さらに情報を盗まれます。脅して焦らせて、時間を刻むのが奴らの常套手段なので、そういう警告が出ても慌てないように。そもそもセキュリティーソフトが『乗っ取られました』という警告は絶対に出しません。
〈SNSにまつわる恐怖は情報の流出や詐欺の被害だけではない。子供だったとしても、スマホひとつで社会とつながることができてしまう。〉
志駕:スマホは身近で便利なツールですが、スマホを持つ・持たせる以上は、あらゆる危険と無縁でないことを忘れないでほしい。年齢なんて一切関係ない。出会い系やパパ活など、女性がスマホを通じて悪い男に引っかかる事件も多いので、特に女の子がいる家庭は気をつけてほしい。親子で映画を見ながら、“ここまではOKだけどここからはダメ”とモバイルリテラシーを高めてほしいです。
〈いうなれば、この映画は“見るセキュリティー”。「もしスマホを落としたとしたら」という恐怖を、存分にシミュレートして、リアルの世界に生かしてほしい。〉
【プロフィール】
◆中田秀夫/1961年生まれ。1996年に『女優霊』で映画監督デビューを果たし、その後『リング』(1998年)、『リング2』(1999年)で日本映画界にホラーブームを巻き起こす。手がけた最新作『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』は前作からの続投。
◆志駕晃/1963年生まれ。『スマホを落としただけなのに』で第15回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉を受賞し、1917年同作品でデビュー。映画に加えて、舞台版『スマホを落としただけなのに』が3月20日より東京、大阪にて上演予定。
※女性セブン2020年3月5日号