「これまで刀剣の展示は人が入らないといわれていましたが、いまや刀剣を持っていない美術館や博物館がこぞって刀剣展示をやりたがるほどの大ブームです。
ブームのけん引役は、何といっても『刀剣乱舞』というオンラインゲームです。それ以前の『エヴァンゲリオン』や『バケモノの子』などの人気アニメの劇中に登場した刀もブームのきっかけとなったようです」
『刀剣乱舞』とは、日本の名刀を擬人化した「刀剣男士」を集めて育てる無料のシミュレーションゲーム。2015年1月にサービスが開始されると、ユーザー100万人を超える大ヒットとなり、舞台化やアニメ化を経て刀ブームの礎となった。
「例えば、当館が所蔵する国宝『明石国行』は荘厳で凜々しい刀というイメージですが、ゲームでは眼鏡をかけたおとなしめのキャラクター。私のイメージとは少しへだたりがありますが(苦笑)、ブームはありがたいことです」(久保さん)
そのほかにも、『週刊少年ジャンプ』(集英社)に2016年から連載中で、シリーズ累計4000万部を売り上げている超人気の少年漫画『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴作)でも、刀は重要なモチーフとして登場する。主人公が鬼を倒すための唯一無二の武器として刀を手にするシーンや、それを作る「刀匠」と呼ばれる職人たちが自らの仕事や作品に誇りを持っていることが伝わるシーンが丹念に描かれる。
15年以上にわたって長期連載中の『KATANA』(KADOKAWA・かまたきみこ作)でも、刀の宿り神が見える不思議な力を持った少年が活躍している。
こうしたエンタメを通じて刀に魅せられた人々が専門書を手に取っているのだ。特筆すべきは、その多くが女性であることだ。前述の岩波新書の『日本刀』は購入者の7~8割が女性だったという。
「当館でも刀の講演会の告知をするとあっという間に予約満席になります。お客さんはほとんどが女性で、アニメをきっかけにした興味が刀そのものへの興味に変わっていると実感します」(久保さん)
※女性セブン2020年3月12日号