「人間には『信じたいものを信じる』という心理が働く。これを確証バイアスと呼びます。自分が『こうだろう』と考えていたことに合致する情報があれば、それに飛びついてしまう。トイレットペーパーの買い占めはまさにそうです。
1月下旬からマスク不足が深刻化し、買い占めがいわれた。そこに、紙不足でトイレットペーパーもなくなるというデマが伝われば、『そうに違いない』と思って知人に拡散してしまう。60代以上の人は石油ショック当時の買い占めが記憶にあるからなおさらでしょう。また、お湯が予防にいいとか、カテキン入りのお茶や生姜、にんにくには体に良さそうだというイメージがあるから、予防策のデマも信じてしまう」
予防にならないといわれても、確信がもてないから「お湯を飲んでも体に悪いわけではない。生姜やにんにくはもともと体にいいのだから」と続ける人もいる。
しかし、平氏は「デマを信じることで感染を拡大させてしまう場合もある」という。
「英国の感染症学者ポール・ハンター教授のシミュレーションによれば、感染症に関するデマの拡散で適切な対策が取られず、感染拡大という悪影響を及ぼす傾向が確認されている。
たとえばノロウイルスについての正しい対処法に関する情報がある場合とデマが含まれる場合の比較研究では、デマ情報が多く含まれていると患者1人あたりの2次感染者数や発病率が上昇するが、正しい情報の割合が高くなると2次感染者数も発病率も急激に減少し、沈静化に向かう水準まで低下した。したがって、感染拡大防止にはデマ対策も必要です。根拠が不明な情報を安易に拡散するのを控え、メディアもデマをはっきり否定することが重要なのです」
※週刊ポスト2020年3月20日号