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愛する娘のために不動産を名義変更した76歳男性の大失敗

同居している娘に実家を継がせようと考えたが…(イメージ)

同居している娘に実家を継がせようと考えたが…(イメージ)

 自分が死んだら自宅をどうすればいいのか、子供たちが揉めるのではないか──遺族が“争続”に陥ることを心配して「生きている間に不動産の名義変更」を考える人もいる。

 都内在住の男性A氏(76)は、同居しながら面倒をみてくれる娘に実家を託そうと考え、不動産の名義変更の手続きを行なった。

 A氏には同居している娘のほかに、離れて暮らす息子がいる。名義変更を急いだのは「もし自分がこのまま死んでしまい、2人の子供たちが自宅の不動産を現金化して遺産分割することになったら、娘が住む場所がなくなってしまうかもしれない」と心配するがゆえの判断だった。

 ところが、結論から言うと、「A氏の判断は大失敗」だという。山本税理士事務所の山本宏・税理士が説明する。

「名義変更と死後相続では、支払う税金の合計額がまるで違ってくるからです。2500万円以内の財産を名義変更する場合、『相続時精算課税制度』という優遇措置を利用すれば、名義変更に伴う贈与税は非課税になりますが、変更時に『不動産取得税』と『登録免許税』が発生します。

 一方、死後に相続する場合には、『登録免許税』だけで済む。『不動産取得税』はかからないのです。この差は非常に大きい」

 A氏の不動産評価額を2500万円と仮定し、山本氏に試算してもらうと、名義変更した場合に支払う額が計87万5000円なのに対し、死後に相続する場合は10万円のみで済む。A氏は約78万円多く税金を支払ったことになり、「金額ベースで考えれば、名義変更のメリットは皆無」(山本氏)という。

 ただし、A氏が心配していたのは「自分が死んだ後に、娘が住む場所を残せるか」ということだった。A氏にとっては、たとえ税金が70万円安くなったとしても、自宅を娘に託せなければ意味がなかった。

※週刊ポスト2020年3月20日号

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