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2020.03.18 16:00  マネーポストWEB

“過剰な遺言書”が原因で兄弟ドロ沼争続へ どう記せばよかったか

父の遺言書の何が問題だったのか?(イメージ)

 遺言書の作成は被相続人(親)が望む形の相続を行なううえで有効な手段だ。相続人(子)にとっても「財産を遺す親の意向」が文書で明確に示されるため、複数の相続人(妻や子)の争いを避けることにも繋がる。

 だが、遺言書の書き方によっては、それが相続人同士をいがみ合わせる原因にもなりかねない。昨年、独り暮らしの父を亡くしたAさんのケースだ。

「父の遺産は2000万円ですが、《兄(A氏)に1700万円、弟に300万円を相続させる》という遺言を書いていたのです。金銭面も身の回りのことも、父の晩年の面倒は私がほとんど見ていたからでしょう。しかし、弟から『兄貴が多いのは納得するが、いくら何でも差がありすぎる。兄貴がそう書くように仕向けたのではないか』と抗議されてしまったのです」

「夢相続」代表で相続実務士の曽根惠子氏が解説する。

「遺言書がなければ、相続人であるAさんと弟は法定相続分(2分の1=1000万円)をそれぞれ相続します。ただし、遺言書の効力は法定相続より優先されるので、遺言書に従って相続することが原則となります」

 ただし、必ずしも父親の遺言通りになるわけではない。

「民法に遺産を最低限取得できる『遺留分』という規定があり、相続人は『法定相続分の2分の1』を請求できます。つまり、弟は遺言書があっても500万円を相続する権利を有する。遺言書に記された額(300万円)との差額(200万円)をAさんに侵害請求できます」(同前)

 つまり、父の意向(遺言書)が“過剰だった”と見なされるのだ。さらに兄弟の確執も招き、相続がドロ沼の“争続”になってしまった。どう記せばよかったのだろう。曽根氏はこうアドバイスする。

「遺言書には被相続人の心情を綴ることができる『付言事項』という項目があります。法定相続分を侵害する相続を予定しているなら、そこに『Aは金銭的に老後の援助してくれた』など、理由を明記すべきでした。ただし、付言事項に法的拘束力はありません。遺留分を超える遺産分割を望むなら、付言事項に加えて、生前に贈与を済ませて弟に遺留分放棄の手続きをしてもらえば確実でした」

 放棄手続きは家庭裁判所の許可が必要で、「申立人(弟)の自由意志であること」「合理的な理由があること」「放棄の見返りがある」などが条件となる。

 遺された家族の幸せを考えるなら、正しい手続きに注意を払わなければならない。あの世から「俺のカネだから、どう分けようと俺の自由だ」と叫んでも、相続のルールを覆すことはできない。

※週刊ポスト2020年3月20日号

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