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2020.03.29 16:00  マネーポストWEB

コロナ騒動で変わった景色 ウイルスの前では「お金の力」も無力

コロナ蔓延後の社会をどう生きるか(閑散とする銀座の歩行者用道路。写真:時事通信フォト)

 新型コロナ騒動は世界中を不安に巻き込んでいる。普段からさまざまなことを体験しリポートし続けている『女性セブン』の“オバ記者”こと野原広子さん(62)は、このコロナ騒動に何を思うのか。イギリスのチャールズ皇太子やボリス・ジョンソン首相、俳優のトム・ハンクスも陽性が明らかになったが、オバ記者が感じたのは「コロナの前に身分や資産の有無は関係ない」ということだった。

 * * *
「もう、いいんじゃね?」と言いたくなるほど、テレビをつければ朝から晩まで新型コロナウイルスの話。イタリアは死者数が中国を抜いて世界一になったというし、パリの街はガラガラ。日本では飲食店や中小企業等が悲鳴をあげている。

 不安に駆られてネットを開けば、9年前の3月11日に起きた東日本大震災の様子がYouTubeにアップされている。当時から地震や津波の映像が配信されているのは知っていた。でも、とてもじゃないけど見る気になれなかったの。9年たって記憶から生々しさがやっと消えたつもりでいたけど、映像を見たら、「ありえない!!」と何回も叫んでいた。

 そういえば3月って、時代が折れ曲がるところを見せられる月でもあるのよね。オウム真理教の地下鉄サリン事件が起きたのは1995年3月20日。あの事件を機に駅のホームからゴミ箱が消えたし、世の中にはとんでもない人たちがいるという不信感と不安を誰もが持ったと思う。

 と、そんな話を昭和6年生まれの男友達Oさんに言うと、「3月といえば、3月10日の東京大空襲ですよ」と言う。「わずか数時間で10万人の人が焼き殺されるって、どんなことか想像つく?」と。14才でそれを目撃した彼は、89才になったいまも、夜中に「空襲警報、発令!!」と叫んで飛び起きることがあるのだという。

 Oさんの隣家には、28才ほど年上の作家・林芙美子さん(『放浪記』が代表作。戦後日本人の悲しみを書き綴った作品多数)が住んでいて、幼少の頃から彼をかわいがってくれたそう。空襲の数日後、林さんと顔を合わせたOさんは、あまりの惨状に泣き言を漏らした。「食べるものも履く靴もなく、布切れを足に縛って連日、死体の片付けに駆り出されて、つくづくイヤになった。疲れた」と。

 すると林さんは、「何言ってるの。あなたは幸せなのよ」と言ったんだって。「えっ?」と顔を上げると、「いいことも悪いことも、全部見て死んでこそ、人。この戦争が終わったら日本はどんどん復興するでしょう。生き残ったあなたはそれも見られるのよ」と言い放ったんだって。

 日本中が混乱と失意に満ちていて、明るい話題を出すことも、顔に笑みを浮かべることも憚られたときだっただけに、Oさんは「なんてこと言うんだ」と思ったという。すると、林さんはさらにこう言った。

「都心を横切って、空襲で焼かれた下町を見に行こう。歴史をちゃんと見るのは、生き残った人間の務めだよ」

 若かりしOさんは黙って同行した。そしていま、Oさんは「あの日、林さんと見た光景は忘れられるものじゃないけど、見てよかったと思う」としみじみ語る。

 数か月に及ぶコロナ禍に世界中が翻弄され、混乱を極めているいま、Oさんの体験談が妙に生々しく思えた。失意のどん底にあってなお、現実を直視し、向き合おうとする林さんのような姿勢が私たちにも必要だと思う。戦争と感染症を一緒にしてはいけないことはわかってる。でも、出口がなかなか見えない状況下で、押し潰されそうになっても、くじけずめげず、なんとか頑張ろうとするのが大切なのは同じだと思う。

 えっ? そんな昔のことを言われたところで、新型コロナウイルスが怖いことには変わりないって? はい、その通りです。だから私は外に出るときはマスク着用で、帰ったら手洗い・うがいは欠かさない。それがこれからずっと日常になるのかもしれない、と思うとほんと、うんざりよ。

 でも! 見方を変えたら、それは昨日の続きを明日もしようと思っているからで、「明日からは昨日と違う日が始まる」、そう思うと、また景色が違って見えない?

 ちょっと前まで、グローバル化って、世界の富をガッツリ集める超金持ちの人と、それで割を食う多くの極貧民が増えることなんだな、とシラケて見ていた。けど、世の中って面白いなとも思うのは、まったく違う角度から矢が飛んでくることよ。新型コロナウイルスの前では世界はひとつ、人間みな平等。お金の力ではどうにもならないことがあるということが、こんなに具体的になったことって、いままであったっけ。

 新型コロナウイルスで落ち込んだり縮こまっていたりしても仕方がないもの。心の新学期、4月を迎えるにあたって、現実をしかと見ながら、前を向いていきましょうよ。

※女性セブン2020年4月9日号

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