「ろくにお茶も飲めないよ。どこも誰も集まらないから、警察もこっちの動きが何も把握できないだろうけどね。若いのには絶対にもめるな、あちこち出歩くなと。特に巣鴨にはお前ら、絶対に行くな! お前らは平気でも、お年寄りにコロナうつしたら迷惑がかかるからなと言い聞かせてますよ」
経営しているキャバクラも客が激減。夜の盛り場からサラリーマンの姿が消え、キャストの女の子たちも暇を持て余し、いつもなら男女の熱気に包まれる店内も、今は冷え冷えしているという。
「あまりに暇だからさ、コロナにコロナで打ち勝とう!というキャンペーンでもやろうか思っている」
景気付けにコロナビールを大量に仕入れ、来た客にサービスすることも考えているらしい。
「マスクやトイレットペーパーは、この業界だからね、誰かしら持っているし、誰かが調達してくる。まず困らないね。女の子たちには、必要なら持って帰っていいよと言ってある。先日はマスクを1000枚仕入れて、欲しいという人にタダで50枚ずつ配ってやった。こんな時に転売とか細かな商売しているやつはダメ、評判を落とすだけだ」
生き馬の目を抜くように、人を騙しても稼ぐのがヤクザと思いがちだが、義理や人情、評判を大事にするのもヤクザなのだ。
「世の中、どこも神経質になってるけどさ、コロナなんて関係ないって若者は大勢いる」
見せてくれたのは、夜の横浜大黒埠頭パーキングの写真。その1枚には停泊中だった、あのダイヤモンド・プリンセス号が写っている。なのに夜の駐車場は、大型連休初日のパーキングエリアのごとく何百台という車で埋め尽くされていた。そこかしこで集まった車が互いにライトをピカピカさせ、その脇で若者たちがたむろしている様子がわかる。走行しているわけではないので、警察も取り締まりはできないという。
「あの感染拡大した船のそばだよ。なのにマスク姿はまずいない。コロナに無関心なのか、自粛なんてクソくらえって感じなのか…。バカは俺たちだけじゃなく、大黒埠頭はもっとバカだらけ」
特定抗争指定とコロナの自粛要請で動きが取れない暴力団関係者にとっては、無軌道な若者たちの熱気や活気も魅力的にうつるらしい。
「バカな若いやつらがこんなにいると思うと、日本もまだまだ大丈夫かなって元気が出るね」