この時、このTwitterユーザーはデマの発信元として個人情報が特定され、トレンドブログなどでさらしものとなった。ところが、実際はこのユーザーの投稿は拡散されておらず、これ以前にも同様のツイートをしているユーザーがいた。特定されたユーザーは、実際にはデマの発信元とは言いがたかった。確かにそのような投稿こそしていたが、他のユーザーも投稿しており、このユーザーだけが批判されるのは極端な反応で、似た内容のデマが他にも複数、発信されていた現実から目をそらしていただけ、とも言えるだろう。
なぜ、一人のユーザーだけに責任があるような奇妙なネット世論が出来上がってしまったのか。
現状、多くの人が休業や臨時休校などで何らかの我慢を強いられており、ストレスにさらされている。それ故、悪く見える人に対してうっぷんを晴らすように攻撃的に振る舞う人が多いのだ。多くの人は正義感から個人情報特定や非難・批判していると考えられるが、その正義感こそが危うい。様々な情報を、自分が考える正義に沿った内容になるようにアレンジするのが人間だからだ。
その正義感によって集め、アレンジした情報をSNSで発信するのは、自分の身を危険にさらす行為である。どこにも本名や本当の連絡先を記していないから問題ないと考えてはいけない。ネットの投稿からは、匿名でも発信元が明らかにできる。デマを投稿・拡散すると罪に問われたり、責任をとって賠償しなければならないリスクがあることは忘れてはならないだろう。
といっても、SNSで似たような意見ばかりのタイムラインを見つづけていると、条件反射のようにそれを拡散してしまいそうになる。情報を投稿・拡散する前に、前述のようなデマが出回りやすいことを意識しておこう。必ず情報元を確認し、情報の真贋を確認できない場合は拡散しないよう心がけたい。
なお、NPOファクトチェック・イニシアティブでは新型コロナウイルス特設サイトを設け、情報の真贋を検証しているので参考にしてほしい。