とはいえ、このままの流れでいくと、よほどのことがない限り民主党の大統領候補にはトランプ大統領に対して勝ち目が薄いと思われるバイデン氏が選ばれる。ただし、11月3日の投票日まではまだ7か月もあり、その間にトランプ氏に対する逆風が吹く可能性もある。
そのカギを握るのは新型コロナ禍への対応だろう。もともと感染拡大が続けば、初動の遅れや感染症対策の不備、オバマケア廃止などに対する国民の不満や批判が高まり、現職のトランプ大統領は不利になるとみられていた。実際、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価はたびたび暴落して株式の運用比率が高い年金にも大きな影響を及ぼしている。好調な経済や株価上昇に支えられてきたトランプ人気にも陰りが出てきていたが、新型コロナ対策で連日のようにマスコミやSNSを通じて“危機に立ち向かう大統領”のイメージを演出し、「集会自粛」で身動きがとれなくなったバイデン氏との差を広げつつある。
劣勢のバイデン氏が形勢を逆転するには、新型コロナ後の大不況を見越して、サンダース流の庶民派政策をより大々的に打ち出して対抗するしかないのではないか。“スリーピー”が“ダーティ”に勝つには“クレイジー”な攻撃力が必要だと思うのである。
●おおまえ・けんいち/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『経済を読む力「2020年代」を生き抜く新常識』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。
※週刊ポスト2020年4月17日号