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コラム

2020.04.07 15:00  マネーポストWEB

63歳女性記者 和牛商品券提案の議員に「商品券で家賃払えるかッ!」

「不要不急の外出は控えて」という都知事からの要請後、週末の都内は閑散(3月28日、渋谷駅前。時事通信フォト)

 普段から生活に密着したさまざまな話題を取材する女性セブンの名物記者“オバ記者”こと野原広子さん(63才)は、新型コロナをめぐり政治家が提案する生活支援策を聞き、大きな疑問を抱いたという。

 * * *
「大変、スーパーから物が消えてるよ。あ、もうお肉がないッ」

 小池百合子都知事が「感染爆発 重大局面」と宣言した3月25日の夜、若い友人から悲鳴のようなLINEが入った。まさかと思って近所のスーパーをのぞいてみたら、店内に人がひしめきあっている。

 歩いて行けるスーパー3軒と、二駅先の大きなスーパー1軒を見て回ったら、どこも肉と豆腐と納豆が棚からきれいに消えているではないの。いや、驚いたね。62年生きてるけど、政治家のひと言にこんなに素早く人々が反応したことってあるかしら。

 小池さんは何と言ったか。「新型コロナウイルスに感染した患者が、都内で多数発生」したので(中略)「できるだけお仕事の際はご自宅で行っていただきたい」「夜間の外出についてもお控えいただきたい」。そして、人々をスーパーに走らせた決定打は、週末、「お急ぎでない外出はぜひとも控えていただくように」のひと言よ。

「何もせずにこのまま推移すれば、海外のようにロックダウン(都市封鎖)を招く。パリも街には人っ子一人いない」とも発言しているし、首都・東京は大変なことになっているんだな。このままだともっと恐ろしいことが起きるから気をつけろ、とこう言いたいんだなということはよくわかった。

 だけどわからないのは、会見した理由を、感染者が「多数発生した」としたこと。「昨日17名、本日41名でこの3日間で74名」(3月25日現在)が、多数?

 そんな私が新型コロナウイルスの恐ろしさをちゃんと理解したのは、小池さんの後に話した国際感染症センター長の大曲貴夫医師のこの発言。

「この病気の怖さというのは、……8割の(陽性の)かたの(症状)は軽いんです。歩けて、動けて、仕事にもおそらく行けてしまう。ただ残りの2割のかたは、確実に入院は必要で、全体の5%のかたは集中治療室に入らないと助けられない」

 さらに「ぼくは現場で患者さんを診ていて、よくわかるんですけど」と前置きして、新型コロナウイルスの特徴を「悪くなるときのスピードがものすごく速いです。本当に1日以内で、数時間で、それまで話せていたのにどんどん酸素が足りなくなって……人工呼吸器をつけないと助からないという状況に、数時間でなる。それでも間に合わなくて、人工心肺もつけないと間に合わない、ということが目の前で一気に起こる」と語っている。そうしたら、人工心肺をつけていた志村けんさん(享年70)が亡くなったという衝撃のニュースが飛び込んできた。

 重症患者が少ないうちはまだ治療ができるからいい。だけど患者数が増えたら、イタリアのように、限りある人工呼吸器を誰につけるか、という恐ろしい決断を迫られる。オーバーシュート(感染爆発)って、医療崩壊を早々に招くっていうことだったのね。

 小池さんが発表する感染者数の後ろには、その何十倍かの感染予備軍が控えている。手をこまねいて放っておくと、あっという間にイタリアのように取り返しのつかないことになる……そう思うと、急に恐ろしくなった。こうしている間にも、私の体の中にちゃっかり新型コロナウイルスが入り込んで、免疫力と音もなく闘っている。そして誰かにうつしているかも……。

 人は不安になると、身を守ることを何かせずにはいられなくなる。スーパーの買い出しでほしいのは食料じゃない、安心なのよ。週末2日間の家族の食料だったら冷蔵庫にあるもので、たいがいはすむはずだもの。

 だからといって、このタイミングで支援金代わりに「和牛の商品券を配ったらどうか」と言った国会議員の先生って、どんな感覚してんの? 商品券で家賃や携帯代を払えるのッ。

 非常時だからこそ、政治家の先生たちの手腕や仕事ぶりが露わになる。小池さんにも、「東京五輪が延期になるのを待って地獄の釜を開けた?」とか、「カタカナ文字はやめて。パンデミック、ロックダウン、オーバーシュートにピンとくる人がどれだけいると思っているの」と、ツッコミどころ満載だ。

 ちなみに私がアルバイトをしている議員会館では、いまだ感染者はゼロ。広くもない会議室で、マスクもせずに会議をしている国会議員の先生たちに、陽性反応が出たという話は聞こえてこない。近いうちに彼らが“8割”に入り、やがて“2割”の仲間入りして、さらに……。なんて、身近な誰かが感染しない限り、私たち以上にピンとこない人たちなんだろうなぁ。

※女性セブン2020年4月16日号

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