だが、小池氏の攻勢はなおも続く。経済対策でも安倍首相の先手先手を打った。小池氏は東京都の要請に応じて休業や営業時間を短縮した中小零細事業者に対して、「感染拡大防止協力金のような仕組みを構築すべく検討を進めている」と損失の一部を補填する方針を打ち出した。都の独自の対策として、最前線でコロナと対峙する医療従事者に1日3000円の「特殊勤務手当」を補助することも決めた。

 それを見た安倍首相は負けじとコロナ治療にあたる医療機関に診療報酬を都と同額の1件3000円上乗せする方針を出して対抗した。小池氏に先を越されると、首相の面子は丸つぶれになってしまうからだ。政治評論家の有馬晴海氏が語る。

「小池知事が新型コロナの感染対策に邁進するのは、一つは危機感の高さであり、7月の都知事選前に有権者にリーダーシップを示す意図もあるはずです。それに比べて安倍首相は緊急事態宣言を出したあとも経済への影響を考えて業界を守ろうとして対応が鈍い。いまや彼我の勢いの違いは歴然としており、小池知事は自民党の協力がなくても都知事選に勝てると自信を持っているから、安倍首相に遠慮はしないはずです」

 海外メディアも日本の首相と都知事の“勢いの逆転”に注目している。米誌ニューズウイークは各国の首脳がみせたパンデミックへの対応を採点する記事でこう報じた。

〈2、3か月前まで、日本の安倍首相はおそらく世界の自由民主主義陣営で最も重要なリーダーだった。政治的パワーは最高潮に達し、東京五輪のアピールでも称賛を集めた。だが現在、危機に当たり断固たる態度を示し、明快で大胆な発言を続けているのは東京都の小池百合子知事だ〉

 世界にそう見られている。

※週刊ポスト2020年4月24日号

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