マスクの路上販売は遠い外国の話だと思っていた。写真はパキスタンで今年2月(AFP=時事)

マスクの路上販売は遠い外国の話だと思っていた。写真はパキスタンで今年2月(AFP=時事)

 ところが、前述の通り3月の半ばには法改正が行われ、マスクの買い占めや転売が規制された。ネットを使いこっそり販売され続けたが、思うように販売ができなくなった転売集団は、やはりSNSを使って販売の岐路を見出そうとしたのだという。

「買い占め司令を出していた人物に、今度はマスクを売らせ始めたんです。それこそ、全国の病院や高齢者施設に営業の電話をかける、スパムメールやSNSを使って売る、最後は路上での密売です。こうした組織は特殊詐欺に関与している連中も多く、情報に疎い人々を操る術に長けています」(G氏)

 若者に人気のアパレルブランド店や家電量販店のセールに、こうした手法で人を集め物品の買い占めし、転売するのもやはり同様の集団だ。さらに…

「連中は、消毒剤や体温計など、転売や買い占めが禁止されていない商品を先回りして買い占めしています。人気のゲーム機でも同じ。品薄になりそうな人気商品があれば、それが人命に関わるものであっても儲かるからやる。マスク在庫がだぶついて損をしている連中も多いでしょうから、もっと力を入れてやってくる可能性もありますね」(G氏)

 いわゆる”転売ヤー”という人々に取材をした経験がある。彼らは「問屋みたいなもの」「商社だって同じ」と開き直るばかりだったが、問屋も商社も、人の不幸に乗じて法外な利益を得ようとはしない。あくまで常識的な「商売」の範囲内で行なっているのだ。転売ヤーの存在は害悪そのもの、場合によっては人の命も奪いかねない卑劣な行為であることに、彼ら自身が気付く日は来るのだろうか。

 そして重要なのは、こうした連中からは絶対に「買わない」ということも書き添えておきたい。人命より儲けを優先する連中が売るマスクなど、まったく信用に値するものではない。どこで作られたのかも、機能的なのかも疑わしく、中には「医療用」などと書かれていても、その要件をまったく満たしていない場合もある。冷静になれない人々が多いからこそ、こういう連中が暗躍する隙が社会に現れることも、理解しておくべきだろう。

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