上野でも人影はまばら
ならば、緊急事態宣言もずっと延長され続けるのだろうか。期限を決めて発令しなければならない法律にもとづく宣言だから、長引くほどに何度も何度も宣言し直さなければならない。ただ、そうしてしまっては、「宣言が終わるまで自粛に努めよう」という国民の動機づけがなされなくなってしまう。
そうした「宣言」の無力化を避けるためにも、感染者や死者数の減少がしばらく続いて、一定の数値にまで達したならば、まだ予断を許さなくても、国は緊急事態宣言をいったん終了させる。それでもって、たとえば「警戒事態宣言」といったワンランク下の宣言を、あらたに法制化して発令するのでは、と私は予想する。
「緊急事態宣言」から「警戒事態宣言」に一段引き下げるのは、「宣言」の無力化回避のためだけでなく、もちろん、経済を少しでも活性化させるためである。ワンランク下の宣言をベースに、都道府県が「警戒事態措置」とでも名づけた方針を作り、都道府県民がもっと自由に行動できる要請内容に変えるのだ。
たとえば、それまで休止を要請していたショッピングモールの営業を可とする。生活必需サービス以外の商品を扱う大規模小売店が店を開けられるようになるのだ。映画館や劇場なども、「隣席との間隔を2メートル以上空ける」などの条件付きで開催可となるかもしれない。夜の飲食店は酒が入るので微妙なところだが、映画館の場合と同じような条件をつけて営業可とする都道府県も出てくるだろう。
「警戒事態措置」では、感染防止のためのそれなりの自粛要請がなされるものの、今の「緊急事態措置」よりはだいぶ行動制限がゆるくなって、そのぶん通常に近い経済活動が行われる。そうすることによって、増加する一方の経営破綻をなるべく少なく留めようとするのである。事業者に対する国や自治体による直接的な経済支援も当然なされるべきだが、限界というものがあるだろう。コロナ禍が長びけば、いつかは、自力でどうにか働いて稼いで、という話になってくる。
世界の流れも制限緩和の方向にあるようだ。日本よりもはるかに厳格な接触制限措置を発令していたドイツは、すでに感染の「第1波」は乗り切ったとし、4月20日に中小規模の小売店舗、車の販売代理店、自転車店、書店などの営業再開を許可している。
医療崩壊の酷さがよく報道されていたイタリアも、5月4日以降にロックダウンを段階的に解除する計画を立てている。その背景には「経済崩壊を防ぐため企業活動再開を要望する業界団体の声が強まってきている」(ロイター)状況があるようだ。
日本はまだ自粛モード一色という感じだが、今の状態が続けば、前述したように経営破綻が急増していくことは間違いない。その結果、失業者も急激に増える。
現在の日本の失業率は2.4%で164万人ほどだが、それがコロナ禍によって10%に跳ね上がり、失業者が600万人を超えるとする専門家もいる。その計算がどれほどリアルかは判断がつかないものの、日本の場合、失業率が1ポイント悪化すると、自殺者が1000~2000人増える傾向があるそうだ。無職という立場がいかに辛いものなのかは理解できる。