感染予防のため券売機を拭く駅員(時事通信フォト)

感染予防のため券売機を拭く駅員(時事通信フォト)

 Aさんは海外帰りだから自己責任だという人は、3月はじめのころをよく、振り返ってほしい。あの頃は、中国への渡航だけが危険だとみなされており、欧州、特に北欧が危険だと考えていた人はほとんどいなかったのではないか。むしろ、帰国後に多少の体調不良を見逃さず、病院を訪れたAさんの慎重さは感染症対策の一つとして推奨される行動だ。

 だがその真面目さのために、予想外に長い入院生活を送ることになったAさん。目に見えぬ検査結果を待つだけの日々は、予想外に苦しいものだった。

「感染患者の場合、PCR検査の結果が二度連続で陰性にならないと、病院を出られません。一度の陰性で喜んでいて陽性が出て……地獄に突き落とされたような感じでした」(Aさん)

 そこから、二回連続の「陰性結果」を経て無事退院。医師からは、引き続き二週間程度は自宅で療養を、と告げられたと言う。

「退院は嬉しかったですが、実はまだ感染してるんじゃないか、という疑いが晴れず、迎えに来るという家族の申し出も断って、自宅まで2時間ほど歩いて帰りました。自宅に帰っても、陰性という結果は本当は間違いで、急に症状が出てきて苦しくなり、誰にも助けを呼べず一人で死ぬんじゃないかとか、ネガティブな想像ばかり。結局まだほとんど自室から出ていない」(Aさん)

 得体が知れず、有効なワクチンも特効薬も開発中という「新型ウイルス」だからこそ、感染者は疑心暗鬼になってしまう。元々はアクティブな性格だったAさんの目下の不安は、不安がいつまでも続き、いつの間にか引っ込み思案になってしまわないか、ということだ。逆に、新型コロナウイルスに感染し、ネガティブからポジティブに性格が変わったと言う例もある。しかし、それが世間に受け入れられるかは別だ。

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