◆数十年かかる経済建設
北朝鮮国内の混乱が沈静化して、新政権下で迫害を受ける恐れのある政治難民の流入が終わった後、今度は出稼ぎ目的の経済難民(密航者)が次々と流入することになる。
金正恩政権崩壊後の新政権の最高指導者がいかに優れていたとしても、日本と同等の経済水準となるためには、海外から多くの経済支援を受けたとしても気が遠くなるほどの歳月が必要となるからだ。
先に述べたように、新政権下の北朝鮮で職を得られなかった人々は、まずは韓国や中国を目指すことを考えるだろうが、中国は北朝鮮難民を中朝国境付近の一時収容施設へ収容した後、北朝鮮へ送還する方針を取っている。仮に中国の国境警備をすり抜けることに成功したとしても、過酷な現実が待っている。
脱北した女性の80%が中国で人身売買の対象にされており、中国人男性に750ドルで売られた例もある。さらに、中国人男性との間に生まれた子供は戸籍を得ることができず、教育も受けていない。中国政府は北朝鮮難民支援団体も取り締まりの対象としているため、北朝鮮難民は中国で相談相手もなく孤立してしまう。
国境警備が現在ほど厳しくなかった時期は、国境警備兵に賄賂を渡して中国へ出稼ぎに行く人々がいたが、彼らは中国に定住することは考えていない。不法入国と不法滞在で摘発されるという理由もあるが、「奴隷労働」ともいえる過酷な肉体労働を長期間続ける気にはなれなかったのだろう。
だから、ひと稼ぎしたら北朝鮮へ戻っていた。このような現実を考えると、金正恩政権が崩壊し、中国へ流れ込んだ人々が、まともな仕事に就き、まともな生活ができるとは思えない。