◆創業家3代目が育つまでの中継ぎ
小売業界の巨人、イオンは3月1日、吉田昭夫副社長が社長に昇格し、創業家出身の岡田元也社長は代表権のある会長に就いた。社長交代は実に23年ぶりのことだ。
岡田氏はイオングループを流通最大手に成長させたが、近年は、米アマゾン・ドット・コムなどネット通販が台頭。デジタル化の遅れに強い危機感を抱いている。
吉田氏は2019年3月からデジタル事業の担当となり、英の大手ネットスーパー最大手、オカドグループとの提携をまとめ上げた。オカドが持つロボットを駆使した物流ノウハウを生かし、現在は数百億円規模のネットスーパーの売上高を6000億円に拡大する計画だ。吉田氏は「オンラインとリアル(店舗)とつながる中、リアルの強みをどう生かせるかだ」と店舗改革の意気込みを語る。
創業家の岡田氏は、「有事」のリーダーになることを期待して吉田氏を起用した。だが、そこには創業家の3代目が育つまでの中継ぎ──との意味も込められている。業界が関心を寄せるのは岡田家の御曹司、岡田尚也氏の処遇である。
尚也氏は外資系金融会社を経て、2015年1月にイオンリテールに入社。ミニスーパーを展開する「まいばすけっと」店長を経て、2016年11月、フランス発祥の有機食品などのオーガニック専門スーパー、ビオセボン・ジャポンの営業部長に就任。店長を経験して、2019年3月1日、社長に昇格した。
父親の岡田元也社長はかねて「世襲は私で終わり」と言っていた。だが、社長引退会見では「本人(尚也氏)がどういう風に考えるかもわからないので、何とも答えようがない」と今後については含みをもたせた。
吉田新体制下で、尚也氏がイオン本体の執行役員にいつ昇格するか。これが世襲の時期を占うリトマス試験紙となる。