国内

繁忙期の農家 コロナで技能実習生が帰国し深刻な人手不足に

外国人技能実習生に頼り切りだった日本の農業(時事通信フォト)

外国人技能実習生に頼り切りだった日本の農業(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための施策は、様々な事柄に影響を及ぼしている。たとえば農業分野では、休校によって給食がなくなったり、飲食店などの休業で余った牛乳や野菜、肉や魚などの食材を買って下さいという呼びかけが盛んに行われているが、実はそれより手前、収穫が間に合わない事態に見舞われている。農業にはまったくの素人である旅館の従業員など人手をかき集めて対応しようとしている農家の今について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 ゴールデンウィークが始まった直後の4月下旬、茨城県常総市の農業・松本弘さん(仮名・60代)の姿は、自身の所有する畑にあった。

「もう一週間くらい、スケジュールが押している。家族や近所の人にも助けてもらってるけど、農業全然やったことないって人もいるし、捗らない。やっぱ全然ダメだね」(松本さん)

 例年この時期は、芋類や夏野菜の種まき、玉ねぎなどの収穫に追われて猫の手も借りたいほどの多忙さだが、今年は特に作業が進まない。それもそのはず、多い時で10名ほどいた、主に東南アジアからの「技能実習生」達が、新型コロナウイルスの影響から全員帰国し、作業人員が確保できていないのだ。

「中~大規模農家は軒並み人手不足、お互いに助け合ったりしてなんとかやっていこうと思ってるけど、結局実習生頼りだったワケよ。実習とは名ばかり、単なる安い労働力、なんて言われてて、まあそういう側面もあったんだけどね。もう、そういうものに頼っていかないと、農業は成り立たなくなってきてるんだよ」(松本さん)

 同じく群馬県内で農業を営む原田幸雄さん(仮名・70代)も、松本さんと同様、技能実習生の帰国によって、深刻な人員不足に悩まされていた。

「人手不足で、収穫も追いつかないし、種まきや植え付けもできない。このままだと夏や秋の収穫にも影響が出そうだと思い、あらゆる知人に“手伝ってくれ”とヘルプを出したんです」(原田さん)

 原田さんは知人のつてをたどって、県内の温泉旅館で働く料理人や客室スタッフ、タクシー運転手を紹介してもらった。いずれも新型コロナウイルスの影響で仕事がないか、大幅に減ったという人たち。みな農業には不慣れだが、労働力にはなる。

「時給に換算すると最低賃金に少し色がついたくらい。でも、仕事がないよりはマシとみんな頑張ってくれています。いや、よくよく考えてみると、昔はみんなこうだったんですよ。農家の繁忙期には、いろんな人が手伝いに来てくれていたんです。農家だって、年がら年中忙しいわけでないし、冬は東京に出稼ぎにも行ってました」(原田さん)

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン