「PCR検査は『いま感染している人』を割り出しますが、現在の体制では無自覚の感染者は検査対象になりづらいうえ、PCR検査数を増やすにも限界があります。
一方、抗体検査は血液を採取して、検査キットに垂らすと約15分で結果が出るため、無症状の人も含めた多くの国民に実施しやすい。イギリスでは2万世帯に抗体検査を実施し、今後30万世帯まで増やす目標を発表しました。PCR検査だけでは分からない“実際の感染者数”を調べるために、少なくとも東京や大阪などの感染者が多い都市ごとに、無作為に抽出した1万人を対象に抗体検査を実施すべきです」
注意が必要なのは、抗体検査は「精度」の検証が不十分だという点だ。日本感染症学会評議員で、グローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝医師(輸入感染症)が語る。
「感染していないのに陽性(感染した=抗体がある)の結果が出る『偽陽性』や、その逆の『偽陰性』が出る可能性があります。結果、“自分は抗体があるから大丈夫”と考えた人が感染を拡大させる恐れがあります。新型コロナに一度かかり抗体を持った人が、再び感染しないとも限りません。WHO(世界保健機関)も、感染者の再発に警鐘を鳴らしています」
留意点を踏まえ、前出・上医師が指摘する。
「抗体検査の結果を受けて“陽性だったから自分はもう安心”と考えるのは早計ですが、抗体の有無を参考にして国民1人1人が行動を見直す指針にすることはできます。PCR検査に加えて、無作為の抗体検査で得られたデータを分析することは有益だと考えます」
※週刊ポスト2020年5月22・29日号