海外へ行くと決めたら、次は国選びだ。どこへ行こうかと考えたときに思い出したのは、5年前に旅行したフィンランドのことだった。
「当時、すでに仕事に悩んでいて、“この仕事をやればみんながハッピーになる”みたいなことってないだろうかって考えた。そこで“幸福度が高い”といわれている国に行けば、何か見つかるかなと、当時から『幸福国』と評判が高いフィンランドに行ったんです。
そこで、いろいろな人に“あなたにとって幸せってなんですか?”って聞いて回ったら、ほとんど、みんな“豊かな教育を受けたこと”と答えた。“フィンランドは個性を伸ばす教育をするから、一人ひとりが好きなことや得意なことをして生きている。だから幸せだ”って言うんです。『幸せ』と『教育』って一体なんだって知りました。
その経験があったから、海外に行くのであれば、ほかの『幸福国』も回ってみよう。そして、ほかの国でも教育がよければ幸せなのか、それとも、ほかにも幸福にする要素はあるのか。『幸福を探すための世界一周』を決めたんです」
しかし、世界への道は平坦なものではなかった。
武将隊プロジェクトを一緒に進めてきた上司に「世界一周をするので退社します」と報告したところ、「転職」や「引き抜き」を疑われた。また、さすがに両親に黙って「世界一周」するわけにはいかない。できることなら、厳格な父親にも理解して送り出してほしい。
そこで、両者の説得のため、堂原さんはいままで広告プロデューサーとして培った技術のすべてを込めて、「なぜ世界一周をするか」「費用の内訳」等のプレゼン資料を制作した。渾身のプレゼンを受けた父親は「そうか。わかった」と納得し、あれほど疑っていた上司も、「気をつけて行ってこいよ」と堂原さんを励ましたのだった。
◆資金350万円 スマホ1つで世界へ出発 ペットボトル1本の「お風呂」
「世界一周の資金は会社員時代の貯金で約350万円。旅はパック旅行ではなく、すべて自分で手配しました。事前に準備をしていてもうまくいかないこともあるから、航空券も宿も、すべてその場でスマホで探した。世界一周旅行の手配は全部スマホでできたので、本当にいまの時代はすごいなと実感しました。
行き先は2種類の幸福度を基準に選びました。1つは、国連が発表する有名な『幸福度』。人生における選択の自由など、生活の満足度が反映するもの。もう1つの幸福度はスイスの民間団体が調査しているもので、“幸せかどうか”を主観ではかる『純粋幸福度』なんです。こちらで上位に入る幸福国は貧しい国や危険地帯が多いんです。
こちらは幸福国ではないのですが、アフリカ・ガーナでは、とても田舎の方だったんですけど、“これ、使えるんだろうか”というようなバケツに汲み置いた水と、ペットボトルを1本、ぱんと渡されて、“これ、お風呂だから”って言うんです。どうやって使うんだろうと悩みました。それを思うと、もう日本の清潔感はスゴイ。なかでもトイレのあの水の流れ方の絶妙さとか、世界に日本式の技術を広めるべきだと思います」