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コラム

2020.05.16 07:00  マネーポストWEB

「家賃下げろ!」で大家が悲鳴「こっちだって大変なんだ!」

大家の立場はますます弱くなる?(イメージ)

 新型コロナの影響でテナント料の支払いが困難となった中小・個人事業者に対し、自民・公明両党は家賃の3分の2(月額上限50万円)を半年間、給付することで大筋合意。安倍首相は39県の緊急事態宣言解除を表明した5月14日の会見で、中小事業者の家賃負担軽減のための新制度を設けると改めて強調した。だが、アパートやマンションなど賃貸物件に住む人々への支援については後手に回っている。

【表】自宅購入、ローン減免、家賃補助… 住まいに関する出費を抑える制度8種

 休業や時短で収入が減り、賃料の支払いが困難になった場合は「住居確保給付金」が最大9月間給付されるが、条件はシビアだ。たとえば東京23区で給付の対象となるのは、2人世帯の場合で収入月額が19万4000円以下、資産(預貯金など)が78万円以下の人に限られる。この場合の支給額は6万4000円だ。家賃相場が高い東京では、「もらえないよりはマシ」という程度の金額といえるだろう。

 こうした事態を受け、公営住宅の家賃減免措置を講じる自治体が出てきたほか、民間では一部の賃貸大手が家賃猶予の対応を打ち出している。このような動きは今後、賃貸不動産業全体に広がるものとみられているが、個人経営の“大家さん”は店子からの「家賃減額要請」に戦々恐々としているという。

 東京・大田区で総戸数11のアパートを経営する山村義之氏(仮名・65)がため息まじりに話す。

「今のところ(減額の)要請はないが、新型コロナが長引けば当然、声を上げる人が出てくるだろう。『減額しなければ出ていく』と言い出す人もいるかもしれない。そうなれば、こっそり“おたくだけ”というわけにはいかず、アパート全体の家賃を下げざるを得なくなってしまう」

 山村氏が大家になったのは10年前。父の死をきっかけに、経営していた飲食店を廃業。今年で築40年になるアパートを相続し、その1部屋に妻と90歳を超える母の3人で暮らしている。賃貸用の10部屋はいずれも2Kで月額6万5000円。すべて満室なら単純計算で月65万円の家賃収入となるが、現実はそうはいかないという。

「年間800万円近い上がりがあれば、老後はわずかな国民年金でも十分にやっていけると考えていた。だが、老朽化したアパートは毎年のように修繕費で100万円単位のお金が消えていく。固定資産税も年間70万円ほどかかる。この10年間の稼働率は平均して7割程度。1年以上、空室になっている部屋もあり、収益の改善は見込めない」(山村氏)

 5年前、外壁修繕のため土地を担保に借り入れた1500万円のローンも重くのしかかる。月々の返済額は20万円近い。

「いま、賃貸物件は“借り手市場”になっている。周りにある築浅の物件も、入居者確保のため家賃を下げているから、相場は下落する一方。この先、経済悪化を理由に“家賃減額は当然”といった空気が醸成されると大家の立場はますます弱くなる」(山村氏)

 冒頭でも触れたが、賃料の支払い・減額に関する支援策が示されているのは、今のところ貸しビルの店子とそのオーナーだけだ。国交省は減額を行なったビルオーナーに固定資産税の減額などを実施する方針だが、山村氏のような個人大家は賃料減額等で収入が半減しても、最大100万円の「持続化給付金」を受け取ることができない。個人大家の不動産収入は給付金の対象外とされているためだ。

 コロナ経済危機の中で「働かなくても賃料が入る大家は最強」という声も聞こえるが、「大家は金持ち」は過去の話。巷には“負動産”を抱えた大家が溢れている。

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