◆中途半端な少子化対策では現状変えられない
こうした現状に対し、政府は5月1日に「少子化社会対策大綱」の原案を公表した。その中で目標に掲げる「希望出生率1.8」の実現に向けて、男性の育児休暇取得率を6.16%(2018年度)から30%に引き上げるなどの数値目標を明記。月内に閣議決定をめざすとしている。
ただ、現実は厳しい。人口動態統計で合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数)をみると、直近の2018年は1.42。人口を維持できる水準は2.07とされているが、1975年に2を割って以降、長期低落傾向が続いている。
安倍政権が「希望出生率1.8」を掲げたのは2015年のことだった。合計特殊出生率は2015年の1.45から2016年は1.44、2017年は1.43、そして2018年は1.42と下がり続けている。中途半端な少子化対策では現状を変えることは絶望的だ。
いま、新型コロナウイルスの感染者数の増加ペースはひと頃に比べだいぶ緩やかになってきた。東京都は感染者数2ケタの日が続いている。5月14日には緊急事態宣言が39県で解除された。
とはいえ、経済への打撃はあまりにも大きい。世界のトヨタでさえ2021年3月期の営業利益を8割減と見込んでいるほどだ。この先、コロナ関連倒産が続発し、失業の嵐が吹きまくる可能性が高い。リーマン・ショック直前の2008年には出生数が前年を久しぶりに上回ったが、2010年以降は長期低迷傾向が続いている。格差社会の進行と無縁ではないだろう。
コロナ禍による経済打撃が深刻化すれば、将来不安が膨らんで否が応でも少子化が加速することは目に見えている。