国内

若者に医療を譲る意志カードが話題 今こそトリアージの議論を

「若者に譲る」という決断ができるか(写真/Avalon/時事)

 大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授で現役医師(循環器科専門医)の石蔵文信氏(64)が高齢者向けに作成した「集中治療を譲る意志カード(譲カード)」が話題を呼んでいる。表面には次のように記されている。

〈新型コロナウイルス感染症で人工呼吸器や人工肺などの高度治療を受けている時に機器が不足した場合には、私は若い人に高度医療を譲ります〉

「譲カード」には医療現場の負担を軽減する狙いがある。医療崩壊が起き“命を譲るか”の選択を迫られる事態になった場合、尊厳死や安楽死と違うのは、「自分の死に方を決める」だけでなく、それが「他人の生死」にも関わってくるということだ。

 評論家の呉智英氏(73)は、「今こそ『トリアージ』の問題を本格的に議論していくべき」と指摘する。

「トリアージとは、非常事態の際に、明らかに助かる可能性が低い人、軽症の人、という形で患者を重症度によっていくつかの段階に分け、治療の優先順位を決めることです。2011年の東日本大震災の時にも注目された言葉で、この時には被災者本人の意思を問うことなくトリアージが行なわれたことに議論が起こりました。

 今回のコロナでも亡くなっている人の大半は高齢者で、80歳を超える人が重症化したら亡くなる可能性が高い。

 とはいえ、医師側の判断で“誰を助けるか”を決めたり、高齢の患者につけられた人工呼吸器や人工心肺を外すのは2011年のときと同じように議論や批判が起こるだけでなく、あとになって医師が遺族から訴えられるリスクもある。

 そんなときに年齢などがトリアージの基準になっていたり、患者がカードによって“若者に医療を譲る”ことを明確に意思表示していれば、そのようなリスクを避けることもできる。

 そういった意味でも現役医師(石蔵氏)が提唱したこのカードは意義のあることだと思います」

 未知のウイルスは、私たちに「生き方と死に方」の責任と覚悟を問うているのかもしれない。

※週刊ポスト2020年5月22・29日号

関連記事

トピックス

司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン
M-1での復帰は見送りとなった松本(時事通信フォト)
《松本人志が出演見送りのM-1》今年の審査員は“中堅芸人”大量増へ 初選出された「注目の2人」
NEWSポストセブン
浩子被告の顔写真すら報じられていない
田村瑠奈被告(30)が抱えていた“身体改造”願望「スネークタンにしたい」「タトゥーを入れたい」母親の困惑【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
「好きな女性アナウンサーランキング2024」でTBS初の1位に輝いた田村真子アナ(田村真子のInstagramより)
《好きな女性アナにランクイン》田村真子、江藤愛の2トップに若手も続々成長!なぜTBS女性アナは令和に躍進したのか
NEWSポストセブン
原英莉花(時事通信フォト)
女子ゴルフ・原英莉花「米ツアー最終予選落ち」で来季は“マイナー”挑戦も 成否の鍵は「師匠・ジャンボ尾崎の宿題」
NEWSポストセブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
筒香が独占インタビューに応じ、日本復帰1年目を語った(撮影/藤岡雅樹)
「シーズン中は成績低迷で眠れず、食欲も減った」DeNA筒香嘉智が明かす“26年ぶり日本一”の舞台裏 「嫌われ者になることを恐れない強い組織になった」
NEWSポストセブン
陛下と共に、三笠宮さまと百合子さまの俳句集を読まれた雅子さま。「お孫さんのことをお詠みになったのかしら、かわいらしい句ですね」と話された(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
【61才の誕生日の決意】皇后雅子さま、また1つ歳を重ねられて「これからも国民の皆様の幸せを祈りながら…」 陛下と微笑む姿
女性セブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン