池井戸潤さん原作小説のドラマと『99.9 刑事専門弁護士』は、2010年代の日曜劇場で最も多くの人々から支持された、言わば“2大切り札”。TBSにとっては絶対的な自信のある作品であり、前例のないコロナ禍のピンチだからこそ、この両作を編成したのでしょう。
あらためて経緯を振り返ると、コロナ禍がこれほど深刻化するとは思っていなかった3月から4月の段階では、『半沢直樹』続編にいい形でつなげるために、同じ池井戸潤さん原作の『下町ロケット 特別総集編』が編成されました。これはドラマにおける番宣のセオリー通りであり、何の不安もなかったでしょう。
しかし、その後『ノーサイド・ゲーム 特別編』を編成しても『半沢直樹』続編の撮影は再開できませんでした。このまま池井戸潤さん原作のドラマを続けると、名作であるにも関わらず視聴者が慣れてしまい、『半沢直樹』続編の放送前に「お腹いっぱい」の印象を与えかねません。それよりも「池井戸潤さん原作のドラマからいったん離れて、もう1つの自信作である『99.9 刑事専門弁護士』でリフレッシュしてらおう」という考えは合点がいきます。
また、『下町ロケット 特別総集編』『ノーサイド・ゲーム 特別編』の放送時に、「面白いんだけど、やっぱり『半沢直樹』が待ち遠しい」「できれば『半沢直樹』の前シリーズをもう一度フルで見たい」というコメントを多数見かけました。前シリーズが放送された2013年から7年間も待たされた視聴者の待望論は強烈なものがあるだけに、TBSとしても難しい選択を強いられていたのでしょう。
4月5日から8週にわたって“池井戸劇場”を放送し続けたのも、5月31日から『99.9 刑事専門弁護士』を放送するのも、すべては「『半沢直樹』の続編を存分に楽しんでもらうため」なのです。
◆「半沢直樹イヤー」だから『99.9』が必要