百田も新型コロナ禍で、注目を集めた人物の一人と言っていいだろう。私は『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』の取材で、百田を5時間半以上インタビューした。
2人に共通すると感じるのが、「その時々の“思い”を重視した発言」だ。玉川は緊急事態宣言について、国が躊躇していた当初は「早く出すべき」と主張し、宣言されたらされたで「まだ甘い」と、その時々で感じたままに発言する。
百田も新型コロナ対策をめぐり、安倍政権への評価を二転三転させている。当初中国、韓国からの入国禁止策を取らなかった安倍政権を容赦無く批判したが、首相側が会食をセッティングし、2月28日に実現すると、百田は以降、しばらくの間、批判のトーンを弱めた。表面的には一貫性のない言動に、リベラル派論客の中には、会食の効果があって批判を引っ込めたと見る向きもあった。だが、そうした見方は間違っている。
その根拠は、2月27日に全国一律で「要請」した小中高校の一斉休校にある。私のインタビューに、百田は「果敢にやらないといけないでしょう。官僚っていうのは自分から決めませんからね、絶対に」と語り、官僚にはできないリーダーシップを高く評価した。最大の評価ポイントは「総理が毅然とした対応をした」ということにある。彼は安倍首相の果敢な姿勢に感動し、中国や韓国に臆病な姿勢をとったことに失望している。その時々で彼は、自分の気持ちを正直に語っているだけなのだ。
インタビューでは生い立ちから思想信条、安倍首相との関係まで聞いたが、そこで見えてきたのは、意外なほど邪気がない人間性だった。彼は自分の気持ちに正直であり、それを隠そうとしない。
百田も玉川も「正直に語る姿」に共感を覚える人が多いのだ。