国内

黒川賭け麻雀が炙り出した「記者クラブ」という癒着組織問題

首相会見での質疑は記者クラブ側と首相側が事前に打ち合わせているという(時事通信フォト)

 黒川弘務・前東京高検検事長の賭け麻雀事件が多方面に飛び火している。5月30日には事件を皮肉った市民らによる賭け麻雀大会「黒川杯」が企画され、検察庁前の路上で開催しようとして大勢の警察官が駆けつける騒ぎが起きた。安倍政権に近いと噂される黒川氏の「定年延長」に端を発する一連の問題は、「黒川氏と大手新聞記者による違法行為の発覚」という劇的な展開を迎え、渦中の黒川氏は罪に問われないまま職を辞した。この賭け麻雀事件が露わにした問題の本質とは何だろうか。

 発端は、新型コロナによる自粛要請のなか、黒川氏が産経新聞の記者2人と朝日新聞の社員(元記者)と賭け麻雀に興じていたと週刊文春が報じたことだった。検事総長就任が噂されていた黒川氏は不起訴のまま辞任し、朝日社員は「停職1か月」の処分を受けた(産経は事実関係を調査中)。安倍首相に近いとみられた黒川氏が産経と朝日という大手メディア記者らと“ズブズブ”の関係にあったことは世に衝撃を与えた。

 女優の大竹しのぶはインスタグラムで、〈検察官というのは法を犯した人を起訴できる唯一の仕事であるはずなのに、その人が、かけ麻雀をしていたなんて、しかも事実を伝えるべき仕事の新聞記者と。〉〈怒りを通り越して、恐ろしいと思いました。〉などと投稿した。今回の記者らの行為について、大手メディアで取材経験のある識者からは、「相手の懐に入るのが記者の仕事」といった擁護論も飛び交うが、一般の感覚は大竹に近いのではないか。

 朝日の内部調査によると4人はこの3年間で月2〜3度賭け麻雀を行い、1回の勝ち負けは1人数千円から2万円ほどだった。どんな微罪であっても相手を逮捕・起訴できるという、強大な権限を持つ検察の幹部が法を破っていることを知りながら、権力を監視する役目を担う新聞記者が報じなかった罪は大きいと言わざるを得ない。いくら賭け麻雀のレートが低いからといって、検察幹部の違法行為を見逃していい理由にはならないだろう。

 週刊文春によれば、黒川氏は昔から産経や朝日だけでなく、他メディアの記者ともしばしば賭け麻雀に興じてきたという。それなのに一度も違法行為が明るみに出なかったという事実は、この問題が産経と朝日にとどまらない可能性を示すのではないか。

 大手メディアと権力の関係性について問題提起を続けるフリーランスライターの畠山理仁氏が指摘する。

「もちろん記者が情報を取るために取材対象と親しくなったり、長い時間を過ごしたりすることはあるでしょう。しかし、あまりに関係性が近くなって貸し借りまで作るようになると、相手のことをきちんと報道できるのかという疑問が生じます。ましてや今回は、銀座のクラブなどで合法的に接待したのではなく、賭け麻雀という法律違反を犯した共犯関係です。記者たるもの、検事長と賭け麻雀をしたのなら、返り血を浴びてでもその事実を報じるべきですが、それをしてこなかった。これでは記者とは言えません」

関連キーワード

関連記事

トピックス

引退後の生活を語っていた中居正広
【全文公開】中居正広、15年支えた恋人との“引退後の生活” 地元藤沢では「中居が湘南エリアのマンションの一室を購入した」との話も浮上
女性セブン
性的パーティーを主催していたと見られるコムズ被告(Getty Images)
《裸でビリヤード台の上に乗せられ、両腕を後ろで縛られ…》“ディディ事件”の被害女性が勇気の告発、おぞましい暴行の一部始終「あまりの激しさにテーブルの上で吐き出して…」
NEWSポストセブン
親方としてのキャリアをスタートさせた照ノ富士(写真・時事通信フォト)
【25億円プロジェクト】照ノ富士親方の伊勢ヶ濱部屋継承 相撲部屋建設予定地の地主が明かした「6階建てお洒落建物」構想
NEWSポストセブン
取材に応じる鈴木宗男氏
兵庫県知事選ほか「暴走SNS」と政治はどう向き合うか 鈴木宗男氏が語る「批判の集中砲火を浴びても生き抜くのに必要なこと」、ホテル避難時に “妻の深刻な心配”を実感
NEWSポストセブン
水原被告がついた「取り返しのつかない嘘」とは
水原一平被告がついた「取り返しのつかない嘘」に検察官が激怒 嘘の影響で“不名誉な大谷翔平コラ画像”が20ドルで販売
NEWSポストセブン
折田氏が捜査に対し十分な対応をしなかったため、県警と神戸地検は”強制捜査”に踏み切った
《「merchu」に強制捜査》注目される斎藤元彦知事との“大きな乖離”と、折田楓社長(33) の“SNS運用プロ” の実績 5年連続コンペ勝ち抜き、約1305万円で単独落札も
NEWSポストセブン
宝塚大劇場・宝塚バウホール
宝塚歌劇第一回公演の“予想外すぎる場所”「脱衣所を改造して…」と甲子園球場秘話「そんなにぎょうさんの人が来るんかいな」《阪急VS.阪神》
NEWSポストセブン
ギリギリな服装で話題のビアンカ・センソリ(インスタグラムより)
《露出強要説が浮上》カニエ・ウェストの17歳年下妻がまとった“透けドレス”は「夫の命令」か「本人の意思」か
NEWSポストセブン
四川省成都市のPR動画に女性社長役で出演した福原愛(写真/AFLO)
福原愛が中国で“女優デビュー”、四川省の“市のPR動画”に出演 バッチリメイクでハイヒールを履きこなす女社長を“快演”、自虐的な演出も
女性セブン
車に乗り込む織田裕二(2025年1月)
《フジテレビ騒動の影響》織田裕二主演映画『踊る捜査線 N.E.W.』、主要キャストに出演を打診できないままピンチの状態 深津絵里の出演はあるのか
女性セブン
大木容疑者(共同通信)。頭部が遺棄された廃マンション
《東大阪・バラバラ遺体事件》「部屋前のインターホンが深夜に鳴った。それも何度も」女性住民が語った“恐怖のピンポン”「住民を無差別に狙っていたのか…」
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「従業員の人が驚くといけないから…」田村瑠奈被告が母・浩子被告に告げた「殺害現場のホテルをキレイにした理由」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン