カタカナ用語を多用し、「密です」と強い口調で警戒を促し、東京アラートを掲げた小池都知事。会見だけでなく、CMや街頭ビジョンにも頻繁に登場し、さらにはYoutuberのHIKAKINとの対談動画や、自身が出演する手洗い動画まで公開した。
前代未聞の緊急事態を前に、一見、都民を危険から守るため、企業や店舗、自治体を含めあらゆる組織が方向性を誤らないようにするため、警鐘をならす「ホイッスル・ブローワー」に徹しているように思えるのだ。ホイッスル・ブローワーとは、本来は内部告発者を意味する用語であるが、広義で言えば、内部告発だけでなく警笛行動(ホイッスル・ブローイング)として組織が誤った方向に進まないよう、それを回避する働きかけをする者という意味も含まれると聞く。サッカーのレフリーなどがルール違反する者に対して警笛を吹くことから来た言葉だ。
だが、そうして惹きつけた人々の関心が、純粋に都民のための言動だったとは考えにくい。一連の広告宣伝費には約9億円の血税が使われ、CMにはタレントではなく自身の出演が条件だったとされる。6月18日に東京都知事選の告示を控える中、表向きはホイッスル・ブローワーとして振る舞いながら、実際には今回のコロナ騒動を、都知事選を睨んだ絶好の“アピール場”と捉えたのかもしれない。
2016年の都知事選では、テレビのインタビューで「私の最大の味方はメディア」と語り、2017年の衆議院解散総選挙の際は自身が代表を務める「希望の党」が大ブームとなった小池都知事。メディアを上手く利用し世論を掴んできた勝負師・小池都知事のあざとくも巧妙な戦略は、今年も見物となるだろう。