◆いままであまり自分で自分をほめてあげていなかった
三吉役の斎藤と同様、自身も辰五郎には親近感があったという。
「原作(『駄犬道中おかげ参り』)と台本を読み比べて、ドラマはわりとぼくに寄せていただいている気もしましたし、撮影は36才になってすぐだったので35才の辰五郎とはほぼ同じ年。タイムリーな役回りで、『俳優は役に選ばれる』と聞いたことがあるんですが、そう感じるセリフが台本にもいくつかあったんです。ぼくが人生の中で大事にしているワードが出てきて、年齢によって役が変わるという現象が自分の身にも少しずつ起こりだしていることを感じ始めた作品でもありました」
例えば、ワケありな沙夜の身の上が明かされる第3話。自暴自棄になる沙夜に向かって、辰五郎は自分を粗末にするなと言い放つ。
「『てめぇが見放したら自分の立つ瀬がねぇじゃねぇか!』ってね。すごく大事な、大切なセリフだと思うし、自分にもそういう時期がありましたからね。これまでの人生で自分が誇れるものはあるのかと考えると何か賞をとったわけでもない中で、等身大の自分を認めるのは簡単なことじゃない。ぼくらの仕事に限らず、どんな社会でもきっとそういうものなんだろうと思います。
だからこそ、『どんなときでもてめぇがいちばんの味方さ』と諭す辰五郎には教えてもらうこともあったし、好きなセリフです」
迷った時期、丸山にも指針となる誰かの言葉があったのだろうか。
「ぼくが思うに“この人のこの一言”が自分の人生や運命、考え方を変えるって一生で一度あるかないか、じゃないのかと。たくさんの人との出会いや言葉、出来事が集まってある程度“ポイント”が貯まったときに『気づき』となる気がするんです。
自信を失った時期にメンバーの言葉が支えになったこともあったけれど、その先にいろんな出会いや別れがあってぼくの中で気づきとなった。きちんと実感を伴って腑に落ちないと、気づきまではいかない。辰五郎の言葉に共感できたのは昨年だったかな、整体のおばちゃんとおしゃべりしていて、いままであまり自分で自分をほめてあげていなかったと気づいたのがきっかけなんです」