労働や貧困問題に取り組むNPO法人「POSSE」代表の今野晴貴さんは、こう話す。
「これは経営陣が果たすべき責任を現場に押しつける、典型的なブラック企業の手口ですね。欧米だったらストライキが起きたはず。日本は社会全体がエッセンシャルワーカーに責任を押しつける風潮がある。社会全体が“ブラック企業化”しているんです。もっと国が責任を持って、社会のために働く人々をケアすべきです」
自治体の相談員や看護師、保育士、小売店員などのエッセンシャルワーカーには非正規雇用労働者が多く、低賃金や正社員との待遇格差が指摘される。役所の窓口職員が安定した公務員だと思って怒りをぶつけたら、実は非正規雇用の職員だったというケースもめずらしくない。
さまざまなリスクを背負って社会を回すために働き続けているのに、客や市民から非難されてはたまったものではない。経営判断だけでなく、国の施策としても非正規の待遇改善が待たれる。
◆今日、普通に過ごせたのは誰かが働いているから
これまで、エッセンシャルワーカーをケアする具体的な対策はなかった。太田さんが言う。
「コロナで休職を余儀なくされる人が多いなか、目立つのが“仕事があるだけいいのでは?”との声です。こうした考えが強く根づいているせいで、日本では目立った対策は講じられていません。
しかし、思い直してほしい。自粛期間中でもコンビニにマスクや消毒液以外の物資が充分にあったのは、製造、物流、小売りなど、各部門が適切に機能していたからです。医療や教育も含めて、エッセンシャルワーカーがいなければ、日本人の暮らしは絶対に成り立ちません」