当時、倉敷市の人口は約47万5000人。岡山県内では県都・岡山市に次ぐ人口第2位の大きな市であり、瀬戸内海に広がる水島臨海工業地域を牽引する巨大な都市でもある。倉敷市の臨海部にはコンビナートが立ち並び、経済・雇用も決して不調ではない。それにも関わらず、倉敷のランドマーク的な駅ビルを減築するに至った。
倉敷駅は岡山市の玄関・岡山駅と山陽本線でわずか4駅しか離れていない。電車に乗れば約20分という近距離にある。食料品や日用品といった買い物なら近所で済ませるだろう。しかし、倉敷市と岡山市は同じ経済圏を形成している。ちょっとした買い物だったら岡山駅まで出かける人も少なくない。
JR西日本岡山支社広報室の担当者は、減築した理由をこう説明する。
「倉敷駅の駅ビルは地下1階から8階まである大きな建物で、系列会社が所有・運営していました。駅ビル内には系列のホテルがありました。しかし、ホテルの稼働率は低く、ホテルとしての活用を断念したのが端緒です。その後、JR西日本やグループ会社なども交えて駅ビルの有効活用を模索しましたが、8階すべてのフロアを効率的に活用するのは不可能との結論になりました。その結論を踏まえ、地下と2フロアのショッピングゾゾーン、そして屋上階の3階を備えた駅ビルへ減築することになったのです」
減築すれば建物の維持・管理費が減少するほか、固定資産税などの税負担も軽くなる。そうした判断の下、JR西日本は実質的に2フロアにする大胆な減築を断行した。
新しい駅ビルは、ショッピング・レストラン・カフェといった身近な商業施設をメインにしたフロア構成になった。そこに宿泊施設はない。利用者が少ないローカル線では、駅舎を改築する際に売店やトイレといった設備を縮小・撤去するケースは以前にもあった。しかし、倉敷駅のような駅ビルを大幅に減築してしまうケースは珍しい。
駅は街の玄関であり、顔としての機能も果たしている。
減築すれば、市民や来街者に街が衰退しているという負のイメージを与えかねない。そのため、行政や地域住民は駅の減築に対して嫌悪感を示すことは珍しくない。また、減築によってテナント数が減少すれば、行政は固定資産税・法人事業税といった税収が減ることになる。減築による負の影響は計り知れない。