ゆるキャラを本業として食べていけるのは、千葉県船橋市の非公式キャラクター『ふなっしー』くらいだ。ほとんどの“中の人”は別に本業を持っている。犬山さんも本業はライター兼デザイナーで、ゆるキャラは副業だ。本業の方が副業よりも2倍ほど収入が多いが、ゆるキャラの収入を丸々失ったうえ、本業でも減収となった。
「持続化給付金を申請して満額の100万円が支給されたので、今のところは何とか生活していけています。でも、ご当地イベントが再開される目途は立っておらず、これが長引けば、ゆるキャラの活動を根本的に見直さないといけません」
そうして犬山さんが始めたのが、YouTubeなどでの動画配信だ。ただ問題は、戸越銀次郎も大崎一番太郎も“喋らないキャラクター”であることだ。無言のままで、どう番組を作るのか。
「今は、大崎一番太郎の動画を配信していますが、アシスタントとして『大崎ニセ番太郎』というCGのキャラクターのVTuberを別に登場させ、こっちに喋らせて番組を進行しています。他のゆるキャラとコラボした番組も既に配信中です」
しかし、YouTubeの動画配信で収益化しようとすると、チャンネル登録数や再生回数などのハードルが高く、お金はまだ1円も入っていない。今のところ、番組企画やCG制作、動画編集などの時間や費用がかかるばかりだが、「それでもやるしかない」と犬山さんは話す。
“アフターコロナ”で人々の生活が変わり、これまでの常識や慣習は通用しなくなった。ゆるキャラも、イベント出演やただ「可愛い」だけでは生き残れない時代に突入し、ファンを増やすための企画力や情報発信力が一層問われる時代になっているようだ。
取材・文/清水典之