ジャパネットの強みは、見つけて、磨いて、伝える。世の中の役に立つ商品を見つけ出し、それをメーカーとともに改善し、その商品の利便性を消費者に訴えるのだ。ただ、先代の経営戦略の骨格をきちんと引き継ぎながら、先代の作り上げた暗黙知を客観的な形式知に転換し、そのうえで、改善の余地のある部分を磨いていく。それが著者の前向きな経営学だ。
本書の後半は、著者の進めた働き方改革とマネジメント手法の詳説だが、この前向きな部分は、経営改革のお手本とも言えるものだ。だから、著者が達成した奇跡の事業承継は、すべての企業が経営を見直すときに役立つ内容なのだと思う。
※週刊ポスト2020年6月12・19日号