料理人になることを決意し、ニューヨークへ。マクロビオティックやビーガン料理の専門学校で「健康に特化した料理」を学ぶ

ニューヨークの料理学校で気づいたこと

 関さんが選んだ学校は、マクロビオティックやビーガン料理など「健康に特化した料理」を教える専門学校だった。学校にはインターン制度があり、最初は精進料理の店で2週間働いた。次にミシュラン2つ星のレストランに応募するも、インターン枠が埋まっており採用は見送られる。

「でも、私の履歴書を見た、その店の栄養管理士のかたから、『あなたのバックボーンは面白い。遊びにいらっしゃい』と誘われ、店に行った。するとすごく話が弾んで、後からきたシェフから、『ちょうどインターンが辞めたから、うちで働かない?』と誘われたんです。日本では、医者を辞めて料理人になると言うと、『本気なの?』と言われる。でもニューヨークでは、『何それ? 面白い』って。新鮮でした」

 関さんは、平日はその店の厨房で、土日は知人が経営する日本料理店を手伝った。休みのまったくないハードな日々だったが、肉体的にも精神的にも苦痛を感じることはなかったという。

「同じ時間を費すのでも、医者として働いているときと、料理をしているときでは、時間の過ぎ方がぜんぜん違うんです。喜びの中で生きるってこういうことなんだと理解しました。

 ライフワークとなる“味噌”と出合ったのもこの頃です。ニューヨークで出会った日本人のかたに味噌の作り方を教えていただいた。日本では味噌は簡単に手に入りますが、海外ではなかなか入手できない。いざ手作りしてみると、大豆と塩さえあれば、こんなに簡単に作れるのかと驚いた。友人たちに振る舞うと『何これ! おいしい』と絶賛され、そこから味噌の魅力に取り憑かれたんです。

 不思議なもので、自分が変わると、周りも変わる。日本にいるときは、誰も自分のことを理解してくれないと思っていたから、すごく孤独でつらかった。でも、ニューヨークで好きなことをして自分がハッピーな状態でいたら、周りがすごく受け入れてくれたんです。

 日本では、医者として頑張らなきゃいけないとか、キャリアを積まなきゃいけないとか、“しなきゃいけない”ってことにとらわれていて、心身ともにストレスを抱えていた。でも、そうじゃなくて、自分が幸せであれば、周りも幸せになる。しなきゃいけないことなんてないんだって気づいたんです」

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