◆「川下の原則」を徹底する
もちろんすべての仕事をアウトプットで評価することは難しいし、一人ひとりに仕事を分担させることが困難な場合もある。それでも「テレハラ」につながるような監視をしなくても済む仕組みや工夫はある。
ひとつは、「成果につながるプロセス」を見ることだ。以前、アメリカ、イギリスの大企業で人事評価について調査したとき、同じ「プロセス重視」でも日本企業とは着眼点が違うことに気づいた。
日本企業では「プロセス」の捉え方があいまいであり、どれだけ残業しているかで評価するような管理職もいる。それに対しアメリカやイギリスの企業では、開発がどの段階まで進んでいるか、取引先との契約がどこまでまとまりかけているか……というように成果に近いところでプロセスを評価する。
もうひとつは、それとも関連するが態度より貢献をみることである。例えば、突発的な仕事を誰が担当したかとか、企画案の作成や意思決定にどれだけ貢献したか、また誰がどのプロジェクトに参加してどんな役割を果たしたか、などを日報に記録する。それをネットでメンバーが見られるようにしておけばよい。このように客観的な貢献度に注目することで仕事ぶりを監視する必要が減り、評価の透明性も高まる。
私は、その人に求められている仕事の成果や果たすべき役割に近いところを「川下」、そこから離れた仕事に対する態度や姿勢などを「川上」と呼んでいる。「川下」で評価すれば「川上」は本人の裁量に委ねられるので、サボっているかどうかを監視する必要はない。
ところが多くの日本企業は、かつての成果主義に対する反省もあって「川上」で評価する傾向があり、社員の側も成果だけでなく努力も見てくれると歓迎する声が多かった。それが今、“努力や頑張りの監視”という形で裏目に出ているのである。
努力や頑張りそのものに価値があるわけではない。仕事で成果をあげ、役割を果たすことこそ大切だという原点に返ることが、「テレハラ」の防止につながるはずだ。