格闘とは面白い言い方だ。実際そうなのだろう。日々、誰もが自分の排泄物を無自覚に垂れ流す。そんな見知らぬ人々が汚すあらゆるものを綺麗にする。絶対になくてはならない尊い仕事である。ましてここは新宿、日本有数の繁華街であり歌舞伎町を含めて一筋縄ではいかない者たちのるつぼでなわけで、迷惑をかける連中は枚挙にいとまがないだろう。具体的にはどのような利用者なのか。
「食事してるのはよくいますね。長居されるんで困ります」
いわゆる「便所飯」というやつか。大学で友だちが居なくていつも一人きりの学生がやっているのは聞いたことがあるが、新宿の多目的トイレではサラリーマン風が多いという。コンビニ弁当を持ち込んで食べているのは序の口で、いったいどうやって持ち込んだのかカップ焼きそばを食べたであろう四角い容器が落ちていたこともあったそうだ。いずれにせよ、どうしてトイレで食べるのか理解に苦しむ。
「あと着替えが多いかな、脱いだ下着がそのまんまとか、だいたい汚れてるんですけどね」
漏らしたのだろう。これは緊急事態、多目的トイレの利用としては問題ないかもしれない。ただし汚した下着は持ち帰るべきだ。大の大人が大を漏らしてしまったわけで、動転する気持ちもわかるが。血まみれの下着の場合は女性で、マナーの悪さに男女の区別はない。
「ノートパソコン持ち込むビジネスマンもいますよ。最近来ないけど、同じ男が定期的にノパソ持ち込んでました」
◆多目的トイレには出入り確認のカメラがある
多目的トイレでSOHO気取りなのか何なのか。確かに一等地で便利そうだが迷惑な話だ。他にはないのか。やはり多目的トイレといえば ――。
「あなた、例のお笑い芸人の件で聞いてるんでしょ」
どうやら見透かされてしまったようだ。それでも原西さんは「まあいいですよ、どこまで使えるかは知りませんけど」と話を続けてくれた。
「めったにないけど、男女で入るとか、男同士で入るとかは実際にありましたね。あとからパートナーが入るとか」