当時の税収はケタ違いだった。竹田理事長によれば、1932年、兵庫県の1世帯平均の所得税納税額が88円だった時代に、住吉村は1070円。断トツの日本一だった。
「当時は所得税収の7%が自治体に交付され、住吉村は豊かな財政で学校や病院などを整備しました」(竹田理事長)
「住吉学園」は1918年、学校経営を目的に設立された。私立睦実践女学校を運営するが、1944年に経営危機で住吉村に委譲される。
「そこで財団の目的に住吉村の発展、福利増進への寄与が加えられた。その後、運営する学校は廃校になりますが、神戸市に合併される時、村有財産が住吉学園に寄贈されました。近隣の町村は合併時に『財産区』(特別地方公共団体)のかたちを取ったが、それだと財産を動かすのに神戸市長の決裁がいる。住吉村は財界人たちのアドバイスで、何かあった時にすぐ旧村民のために資産を使えるように、学園への移管を選んだのです」(同前)
今回のコロナ支援金も70年前の“村の遺産”が原資だというのである。
◆収入は年12億円
現在、住吉学園は75万坪ほどの土地を所有する。
「一時は固定資産税の支払いにも苦労しましたが、所有する土地の開発などで地代が増え、今は年間約12億円の収入があります。固定資産税などを含めた支出は8億円ほど。住民のために使えるお金は潤沢にある」(同前)
今回の支援金だけでなく、旧住吉村9地区の各公立小学校の施設充実のために2000万円の寄付などを行なっている。