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コロナ株安で年金運用17兆円超の赤字でも悲観しなくて良い理由

17兆円損失で私達の年金はどうなるか

 長寿時代、多くの人が将来のお金の不安を漠然と感じている。だが、お金の話は難しくてよく分からないという人も多い。資産運用や投資に詳しい金融ジャーナリストの鈴木雅光さんが、お金に関するさまざまなニュースを分かりやすく解説する。今回は、17.7兆円もの赤字を発表した公的年金の運用について。

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「年金運用 新型コロナで過去最大の17.7兆円の赤字」――。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7月3日、2020年1~3月期の運用赤字が、四半期として過去最大の約17.7兆円となったことを発表した。新型コロナウイルス拡大による企業の株安が響いた結果だが、衝撃的な赤字額に多くのメディアがこぞって冒頭のような見出しで報じた。

 私達が将来受け取る公的年金の一部を運用している機関が、わずか3か月間で17兆円以上もの損失を出したということになれば、「私の年金、大丈夫なの?」と誰でも不安になるもの。毎月の給料で日々のやりくりをしている身からすれば、17兆円なんて天文学的な数字だし、それが短期間での損失とくれば、「年金でそんなギャンブルをするなんてとんでもない」と怒りたくもなる。

 しかし、実はその心配は取り越し苦労ではないだろうか。なぜなら、GPIFが株式などによる年金の運用を開始した2001年からの運用成績は、今回の運用損を含めても57.5兆円のプラスだからだ。2019年度通期の損失額も8.3兆円になる見通しだが、過去の経済危機の際の運用結果を見ると、リーマン・ショックが起こった2008年度は9.3兆円の損失を出したものの、翌年度には9.2兆円の利益を計上している。

 年度ごとの損益状況を見ると、2012年度は約11.2兆円、2013年度は約10.2兆円、2014年度は約15.3兆円のプラスとなっており、過去5年の損益状況を見ても、赤字になったのは2015年だけである。今回の17兆円の損失も、4~6月期は世界的に株価が大きく戻したことから、恐らくかなり相殺されているはずだ。確かに運用損は褒められる話ではないが、17兆円の損失を問題視するなら、利益が出た年度についても取り上げなければ、意味のない議論ではないだろうか。

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